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「博多ではない福岡」から思い描く未来
大神設計株式会社 神谷 祐輔さん
鳥羽山 康一郎
2019/09/09 (月) - 08:00

父ちゃん母ちゃん会社を「企業」へ

今でこそ40人超の従業員を抱える大神設計だが、そのスタートは個人事務所。今でも社長の奥さんが副社長を務めている。息子が次期社長となることは既定路線で、いわゆる「同族会社」だ。そこにあって、神谷氏の立ち位置はどこなのか。
「『父ちゃん母ちゃん会社』からの脱却を進めることだと思っています。よかれ悪かれ個人商店的な空気は残っているので、それを『企業』にしていかなければ」
方策のひとつが、「メリハリを付けること」だ。例えば神谷氏は会社から徒歩45秒の場所に住まいがある。職住近接ならぬ隣接だ。東京時代は江戸川区から豊島区の駒込まで通勤していたから、その間にオンとオフを切り替えることができた。今はそのスイッチがない。地方転職の大きな魅力が通勤時間の短さであるが、短すぎてメリハリが付かないのだ。従業員の立場としては、「会社ではなく家に行く」感覚。これでは個人商店から脱しきれない。
「正直、一般企業からすると『え?』ということもまだ残っていて。妻の弟も会社勤務経験がありますから、同じような驚きがあったと聞きました」
経営幹部として都会から外部人材を迎えたが、結局うまくいかなかったというケースは多い。しかし次期トップと感覚を共有できていれば、その危惧はないだろう。外の風が、新機軸を運んでくる。
「企業として総務機能も強化していく必要があります」。コーポレートガバナンスやコンプライアンスといった、都市部では聞き飽きた単語がまだ新鮮に響く状況が残っている。

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同族会社を「企業」に育てていくのは経営人の手腕

目指すは建築コンサル商社

大神設計の営業品目を見てみると、施工図、トレース、工事写真、データファイル、派遣といった項目が並ぶ。
「もともと図面作成の請負から始まった会社です。同じような営業をしている会社もたくさんありますが、それだけでは限界があります」
そこで、書類や建築写真整理の代行、現場へCADオペレーターや図面を描く人材を派遣といったサービスも加えてきた。さらに「BIM」という項目もある。これは、「Building Information Modeling」の略で、建築図面の情報管理を自動で行い、設計から施工までの全プロセスでデータを一元化することでミスやコストを大幅に削減できるシステムのこと。普及はまだこれからと思われているのだが、近い将来を見越して導入されている。
「そもそも建築の図面をきっちりと描いて進めているのが日本の特色なんですが、世界的に見ると少数派です。BIMによって図面が要らない時代になっていくとも言われていますし」
さらに神谷氏はこういった知識を充実させながら新しいスキルを身に付け、一種の「コンサル」のような形になることを目指している。
「今までは当社が扱っている商材の中でしか対応できませんでしたが、そういった知識や人脈を駆使して問題解決をしていきたいです。建築業界のコンサルティング商社という位置付けです」
単なるアウトソーシング先から、ソリューションを提供する存在へ。あそこに頼むと何でも解決してくれる──黄色いグミキャンディからコンサルへの道筋が引かれた。

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大神設計のWebサイト(http://ohgami.net/)からは、アンテナ感度の高いイメージが

福岡市の「へり」のやり甲斐と楽しさ

冒頭で「緑の濃い町並み」と書いたが、ここは福岡市の中でも郊外の南区である。九州随一の大都市・福岡といえども、中心地の博多区とは比較にならないほど自然にあふれている。東京なら、千代田区・中央区・港区ではなく多摩の1エリアに置き換えて考えればわかりやすい。
「博多からずっと南に下ってきて、そのまま行くとすぐに佐賀県です。都会という感じではまったくありませんね」
いわば、福岡市の「へり」に位置する南区。大阪、東京といった大都市に比べ「とても住みやすい」と言う。正直、年収は2割ほど下がった。だが、家賃や交通費を考えると気にならない。物価はさほど変わらないが、「激安スーパーが多いんですよ」と神谷氏。車でそういった所を回るのも楽しい。スーパーで普通に売っている刺身がおいしくて、衝撃を受けたそうだ。
「こっちは食べ物もお酒も素晴らしい。飲むのが好きなので、本当に嬉しいですよ。今まで控えていたゴルフも再開したいと思ってます」。どちらも営業には欠かせないたしなみだ。神谷氏の営業力が本領発揮される日も近い。
プライベートでは、旅行に出かけるのが好きだという。ドライブはもちろんのこと、福岡空港まで近いので出かけやすい。さらに、博多港からフェリーも頻繁に出ているので大阪や神戸などに足を伸ばせる。
「上の息子は、東京にいた頃は新幹線が好きだったんですが、今ではすっかりフェリー好きに。私も釣られてます」と笑う。
やり甲斐・生き甲斐は大都市のへりにあり──地方に行きすぎずほどほどのローカルというのも、未来を決める選択肢のひとつなのかもしれない。

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緑の濃い運動公園を歩き、英気を養いアイデアを練る

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神谷 祐輔さん

1985(昭和61)年、大阪府寝屋川市出身。大学卒業後、大阪に本社のある飲食・サービス業を展開する会社に就職。翌年東京のグミキャンディ製造会社へ転職し、営業マンとして活躍。大阪時代に知り合った現在の妻と遠距離恋愛の末結婚。2019(平成31)年2月に福岡市南区の大神設計株式会社へ転職。2児の父。

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