【地方都市の魅力】静岡県浜松市 子育て世代が働きやすい移住者憧れの政令市
亀和田 俊明
2020/06/10 (水) - 07:15

新型コロナウイルスの影響で、都市での生活や働き方に疑問を抱き、地方回帰が高まっているといいます。地方移住の相談会やセミナーが中止となるなか、出展無料の移住希望者と全国の自治体などをオンラインでつなぐ「移住フェア」も5月31日に開催され、50を超える団体が出展しました。地方移住への関心が高まるなか、どの地域、どの都市を選ぶか、12の地方都市について「移住と暮らし」という視点からさまざまな実態をお伝えしますので、地方都市への移住を考える上で参考にしていただければと思います。5回目は静岡県の「浜松市」です。

温暖で多様な暮らし方楽しめる老若男女に人気の街

5月14日に「緊急事態宣言」が解除された静岡県ですが、浜松市では経済対策として、「PayPay」を使ったポイント還元を7月1日から始めます。導入した飲食店などで30%のポイントを利用者に付与するもので、域内消費を活性化し、新型コロナウイルスで減収などの影響を受けた事業者を支援するものです。当初は約2万人の利用を見込んでいましたが、より多くの人に還元できるよう予算額を2億円から5億円に増額し、実施期間は7月の1ヵ月間となりました。

さて、浜松市を抱えた静岡県は、ふるさと回帰支援センターの「移住希望地ランキング」で2018年の2位から2019年には3位へと順位を下げていますが、首都圏からのアクセスの良さなどすべての年代で5位以内をキープ。一方で、全国のビジネスパーソンを対象に「快適な暮らし」や「生活の利便性」、「生活のインフラ」など8分野で調査した日経BP総合研究所の「住みよい街2019」では、浜松市は全国341自治体で75位、中部エリアでは10位でした。

静岡県西部にある人口約80万人の政令指定都市で、2005年に12市町村が合併して生まれた市の面積は全国で2番目に広く、南部は平野、北部は赤石山系の山々が連なり、西には浜名湖と自然豊かな街です。ヤマハ、河合楽器製作所、ローランドといった世界に誇る楽器メーカーが本社を置き、スズキ、本田技研工業といった世界的企業も同市で創業するなど日本有数の「ものづくり都市」であり、都市の幸福度ランキングでは政令市20市中1位(2018年)です。

比較的温暖な気候で、冬は強い季節風が吹くので寒く感じられますが、ほぼ晴れで、年間を通じて暖かい都市です。浜松市の1981年から2010年までの平均気温は下表のように16.4度で、2019年は17.5度と上がってきており、年平均気温は上昇傾向がみられます。1 年を通して、気温は3度から30度に変化しますが、0度未満または34度を超えることは滅多にありません。日照時間の年間合計値は 2,179,2 時間で、他の主要都市と比べてもトップクラスの長さです。

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(資料:気象庁資料を基に筆者作成)

東海道新幹線の停車駅でもある浜松駅を中心にJR東海道線が東西に、遠州鉄道が南北をつないでいるほか、掛川市や浜松市、湖西市を繋いで北部を走る天竜浜名湖鉄道、浜松駅を中心に放射線状にのびる遠鉄バスも便利です。東京、大阪ともに新幹線で約1時間半。東名高速のインターにも近いですが、約60万台と自家用車を所有している家庭が多いのも特徴です。空港は車で50分の距離に国際便も豊富な冨士山静岡空港があります。

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(資料:国土交通省調査より筆者作成)

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(資料:浜松市統計書より筆者作成)

デジタル・スマートシティによる都市の最適化を目指す

3月に国土交通省から発表された静岡県の対前年比の平均変動率は、住宅地が12年連続で0.7%下落だったものの、商業地は中心市街地などで需要が高まったことから0.1%の上昇でした。商業地はオフィスや投資、マンション建設などの需要を取り込み、12年ぶりの上昇でした。繁華街を抱える浜松市は商業施設やオフィス需要が堅調で、全用途の平均変動率は0.4%、商業地では0.9%とやや上昇しました。

住宅地の上昇率は0.1%でしたが、上位11地点のうち中区、西区が8地点を占めていますが、近年では新しい大型商業施設やタワーマンションの立地も進み、子育て世代や高齢者がまちなかに移り住む傾向があるほか、投資目的の購入も価格上昇に影響を及ぼしているとみられます。郊外から都市機能が集積して生活利便性の高い都心への回帰傾向から駅周辺など好立地エリアで上昇しています。

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(資料:国土交通省資料より筆者作成) ※カッコ内は前年実績

また、浜松市の事業所数は約3万6千、従業員数は約37万人ですが、事業所数、従業員数ともに全国の市町村ランキングで15位、東海では愛知県の名古屋市に次いで2番目です。第3次産業の就業人口が6割を超えており、産業別の規模としては、製造業、卸売業・小売業、医療・福祉の順となっています。

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(資料:「平成28年経済センサス」より筆者作成)

浜松市では、令和2年度は都市の将来像である「市民協働で築く『未来へかがやく創造都市・浜松』」、未来の理想の姿「1ダースの未来」の実現に向け、戦略計画を核としたPDCAサイクルにより諸施策を着実に推進するほか、重点化テーマ「多様性とイノベーションで理想の未来を創造」に基づき、「若者がチャレンジできるまち」「子育て世代を全力で応援するまち」「持続可能で創造性あふれるまち」の「3つのまち」を創る施策に重点を置いた編成になるといいます。

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(資料:「浜松市令和2年度の予算概要」を基に筆者作成)

浜松市は、「デジタルファースト宣言」によりデジタルの力を最大限に活かした持続可能な都市づくりの推進を掲げ、デジタル・スマートシティによる都市の最適化を目指していますが、多様な主体の積極的な参画と官民の連携を促すための仕組みとして、官民連携プラットフォームを4月1日に設立しています。実現に向けた第1弾としてIoTプラットフォーム「FIWARE」を活用した実証実験プロジェクト「Hamamatsu ORI-Project」への参加者を募集しています。

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(資料:浜松市提供)

子育て・教育環境の向上や健康寿命の延伸などに注力

下表のように転出超過となっている浜松市ですが、2018年に比べ転出者数は545人減少しています。同市全域の移住に関するワンストップ窓口「浜松移住センター」では、暮らしの情報から住まい、仕事に関する相談までトータルにサポートしますが、区役所や関係機関、移住コーディネーターと連携し、移住者支援を行っています。なお、移住促進ホームページ「はじめよう、ハマライフ」は移住者の声など含め移住情報が充実していて実用的です。

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(資料:総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」を基に筆者作成)

浜松市子育て情報サイト「ぴっぴ」では、SNSと連動して子育て情報を日々配信しているほか、支援サービスの紹介をはじめ、ファミリー向けイベント情報や子育てに役立つ豆知識まで網羅しています。また、育児相談や子育て情報などは、市内各地で週に4~7日ほど職員が常駐して対応する「子育て支援ひろば」が開催されていたり、子育てを援助してほしい人と援助したい人が会員となって助け合う「ファミリー・サポート・センター」もあります。

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(資料:浜松市役所HPより筆者作成)

静岡県は若者から高齢者、子育て女性の就労を支援する「しずおかジョブステーション」を浜松市に設置していますが、同市では、待機児童の多い地区での認定こども園や保育所の整備を進め、定員を拡大するとともに、少人数の単位で0歳から2歳児までを対象とした小規模保育事業及び事業所内保育事業の実施により、待機児童の解消を図っています。2018年の97人から2019年は31人へ減少し、2020年4月1日時点では待機児童は11人です。

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(資料:厚生労働省資料より筆者作成)

静岡県内の病院・診療所に関する情報は「医療ネットしずおか」で閲覧可能で、自宅を登録すれば緊急時に病院の検索ができます。がんの専門医療を受けられる「がん診療連携拠点病院」としては、浜松市を含む西部医療圏で聖隷三方原病院、聖隷浜松病院、浜松医科大学医学部附属病院及び浜松医療センターの4つの病院が指定を受けているほか、聖隷三方原病院は、ドクターヘリ、ER型救急診療、多発外傷など県西部地区の救急医療を担っています。

森記念財団都市戦略研究所が経済規模や文化度などを都市力として72都市を対象にした「日本の都市特性評価」によれば、同市は総合ランクでは13位なものの、特に環境面では堂々の1位。経済・ビジネス(ビジネスの活力)は9位。生活・居住面、特に育児・教育分野において10位のほか、生活利便施設で11位と高い評価を得ています。自然を満喫できる場所が多くあるほか、都市機能も充実しているのに東京にも近く、移住者の人気を集めています。冒頭の楽器メーカーや自動車会社のように多くの「ものづくり産業」を創出し、何事にも果敢に挑戦する気質「やらまいか精神」が根付く浜松市は、地方都市への移住を考える上で有力な候補地の一つといえるでしょう。

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