ウィズコロナ時代に関係人口で考える地方創生② 副業・兼業で考える関係人口の創出と拡大
亀和田 俊明
2021/01/29 (金) - 07:00

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まらず収束がみえないなか、仕事や働き方、住まい、暮らしなどポストコロナを見据え国民の意識の変化や行動変容をもたらしていますが、注目されているのが地方移住など地域への関心とともに首都圏人材の副業への関心の高まりです。首都圏においては副業容認、副業解禁する企業も増えてきていますが、さまざまな事例や法改正などを交え、今後の「副業・兼業」を軸に関係人口について考えてみたいと思います。

地方への人の流れをつくる、関係人口の創出・拡大へ

2021年が明け、首都圏や関西圏、東海圏など11都府県に「緊急事態宣言」が発出され、新型コロナウイルス感染症は収束をみていませんが、1月18日の菅首相の「施政方針演説」では、東京一極集中の是正、地方の活性化という長年の課題に対し、5ヵ月連続となる東京都の「転出超過」の機会を捉えて「地方にいても都会と同じ仕事、同じ生活ができる環境をつくり、都会から地方へ大きな人の流れを生み出してまいります」と述べられていました。

具体的な施策として述べられたなかには、令和2年度第3次補正予算に約30億円が計上されている、地域の中小企業への転職を希望する大企業で経験を積んだシニアを官民ファンド「地域経済活性化支援機構」を通じて経営人材として紹介する取り組みがありました。マッチングは地方銀行などが担い、大手銀行からスタートして今後3年間で、商社やメーカーへと対象業種を広げて1万人規模の登録と1千件のマッチングを想定するといいます。

令和2年度が年度末を迎えていますが、内閣府では既に令和3年度概算要求がされています。次年度も引き続き「地方創生」の項については、まち・ひと・しごとの創生と強靭かつ自律的な地域経済の実現のため、地方の創意工夫をいかした自主的な取り組みを政府一体となって支援するとされていますが、企業人材と地域企業の関わりについては、「企業人材等の地域展開促進事業」が予定されています。

即戦力の企業人材と地域企業とのマッチングを支援する「プロフェッショナル人材事業」を強力に展開していくため、人材の供給元となる東京圏の大企業等における副業・兼業を含めた多様な形態での働き方に関する理解の増進やリカレント教育の実施、フォーラムやセミナーの開催による企業経営者等への意識醸成、新型コロナ禍における人材市場の実態を把握し外部人材活用の有効性を地域企業に広く発信する等を行うといいます。

地方での副業経験後に移住・転職の可能性あり約7割

さて、2020年9月に国土交通省が実施した三大都市圏に居住する約7万5千人を対象とした「地域との関わりについてのアンケート」によれば、三大都市圏都市部の18歳以上の居住者(約4678万人)のうち、約18%(約858万人)が関係人口として、日常生活圏や通勤圏等以外の地域を訪問していることが分かりました。下表では就労型(直接関与)と就労型(テレワーク等)の項目に「副業」が含まれてきます。

【関係人口の存在(三大都市圏)】9030_01.png (32 KB)(資料:国土交通省資料を基に筆者作成)※対象地域の18歳以上の人口に基づき、男女比率及び年齢構成を踏まえて母集団拡大推計

コロナ禍でテレワークなど働き方が見直されるなか、移住した「定住人口」でもなく、観光で訪れる「交流人口」でもない地域と多様に関わる「関係人口」が地方創生を促進する存在として注目並びに期待されています。政府もまち・しごと・ひと創生会議で、2020年度からの5年間の地方創生の方向性を示す基本方針の一つとして「地方での副業・兼業を後押し」を打ち出しており、「地方への新しい人の流れをつくる」取り組みを強化しています。

昨秋に実施されたみらいワークスによる「2020年度首都圏大企業管理職の就業意識調査」では、地方への転職に「興味がある」「やや興味がある」の合計は48%、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、地方で働くことの関心が「とても強くなった」「強くなった」の合計が33.4%、「35歳~44歳世代」が最も高く42.0%。地方の中小企業から経営幹部候補としてのオファーがあった際、「現状の収入より減少しても転職の可能性がある」が36.7%でした。

また、地方の中小企業のへ経営幹部候補としての転職を考えた際、最も重視するのは、「企業の魅力」が44.1%、「給与条件の魅力」が36.3%、「そのポジション(裁量)・ミッションの魅力」が34.5%、「その勤務地の魅力」が25.2%。地方の中小企業での月に1~3回程度の副業に「興味がある」「やや興味がある」の合計は59.5%、「35歳~44歳世代」の興味関心が最も高く64.7%となっています。

地方の中小企業での副業に興味がある理由としては、「副収入」が40.8%、「地方中小企業を支援することでのやりがい」が32.5%、「スキルアップ、成長」が18.3%、「地方貢献・地方創生」が8.1%で、約6割の管理職が「副収入」以外の理由があることが分かりました。地方での副業を経験後に、 その地域への移住・転職につながる可能性がある人は70.7%で、「35歳~44歳世代」の可能性が最も高く、74.6%にも上りました。

9030_02.png (112 KB)(出典:みらいワークス「「2020年度首都圏大企業管理職の就業意識調査」より」

企業の「副業・兼業」容認は約5割、副業希望者も増加

2020年2月に実施されたデトロイトトーマツグループの調査では、働き方改革に取り組む国内企業は9割(上場会社を含む回答企業)に上り、副業や兼業の許可・推奨の伸び率は前年より12ポイント増加していました。総務省の「就業構造基本調査」(2017年)でも副業を希望する雇用者数は10年前の約300万人から約385万人へと大幅に増加していることが分かっています。副収入を望むほか、自己実現のために副業に関わる人が増えている傾向にあります。

雇用者の希望が増加するなか、雇用者を抱える企業側においても「副業解禁」の流れにあります。昨秋、マイナビがまとめた「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」では、「副業・兼業」を認める企業は49.6%に上っているほか、将来的に認める予定の企業も57%になることが分かりました。さらに、副業を導入する企業は社員の「スキルアップ」や「モチベーション維持」等に対して肯定的な印象を持つ企業が多かったといいます。

「モデル就業規則」の改訂を機に大手企業を中心とした副業容認の動きが大きく進み、企業側の制度も整って各社は業務に支障のない範囲で副業を認めるようになってきています。特にコロナ禍で業務が減少した企業には社員に副業を促すところもあり、今では東京圏を中心にすっかり副業というスタイルが浸透してきています。働き方の変化に伴って、副業に対する興味や副業で地方に貢献したいという人も非常に増えてきています。

下表のように5年ほど前から副業に取り組んでいるロート製薬をはじめ、多くの大手企業が副業を認めるに至っています。コンプライアンス上の問題から副業先の制限、就業時間外や休日など本業に差し障りのないの範囲での活動、事前の届出制など条件が付けられるケースが多いものの、携わる副業人のスキルアップや本業への好影響などを期待している企業もみられます。多様な働き方を認めることで企業の魅力が高まることにもつながるでしょう。

【副業解禁の主な企業】9030_03.png (28 KB)(資料:筆者作成)

一方で、逆に副業者の公募を始める企業も徐々に増えてきています。ライオンでは2020年5月に新規事業の育成を担う公募を始め、8名が10月から始動しているほか、9月からはダイハツ工業、またヤフーでも7月から「ギグパートーナー」募集などの副業人材の採用を始めています。社内での副業解禁もさることながら、今後は経験やスキルを持った副業者の受け入れを認める企業も増えてくることが予想されます。

ガイドラインの改訂で副業・兼業認める企業も増加へ

厚生労働省は2018年に「モデル就業規則」を改訂し、副業を届出制で原則認める方針を打ち出しましたが、副業のリスクを懸念する企業が多いのも事実です。前述のマイナビの調査では、「社員の労働時間が過剰になり本業に影響が出る可能性がある」(44.3%)、「社員が転職してしまう可能がある」(33.9%)、「会社情報が流出してしまう可能性がある」(27.1%)、「機密情報が流出してしまう可能性がある」(26.3%)等を懸念する声が上がっていました。

副業や兼業の推進に当たって、労働時間の通算の是非や長時間労働の抑制などの課題がありましたが、厚生労働省は2020年9月に「副業・兼業の促進に関する」新たなガイドラインを作成しました。この改訂により労働時間については、従業員の自己申告に基づき副業時間を把握することを認めたほか、従業員の虚偽申告や申告漏れなどで労働時間が法定上限を超えた場合にも企業が法的責任を負わないようになりました。企業間のやりとりもほぼ生じなくなります。

【副業・兼業の促進に関するガイドライン改正ポイント】9030_04.png (11 KB)(資料:厚生労働省資料より筆者作成)

また、これまで個々の会社で労災の認定を行っていましたが、9月の「労働者災害補償保険法」の改正により、副業をしている場合の労災保険の補償内容が大きく変更されました。新たな内容としては、複数事業労働者への労災保険給付は、全ての就業先の賃金額を合算した額を基礎として保険給付額を決定することになりました。

【労災保険法の改正ポイント】9030_05.png (8 KB)(資料:厚生労働省資料より筆者作成)

2018年1月に政府は従来の副業禁止を規定した「モデル就業規則」を改め、雇用の流動性を高める副業の推奨に傾いてきました。この流れを加速したのがコロナ禍でのリモート環境への移行など働き方の変化といえます。「副業・兼業の促進に関する」ガイドラインの改訂や労災保険法の改正などにより本業の仕事、副業の仕事で貢献、成果を上げていくことができる環境整備で、副業を認める企業がさらに増えることが期待されます。

副業は働く側にとってもメリットは多くあります。コロナ禍で副業や兼業を望む人は増えており、今までの経験やスキルを活かして企業で得られない知識を得る、新しいキャリアを身に付けられる、人脈を広げる、成長が期待できるという働き方は、企業にとってもプラスになりますし、社会全体として見ればオープンイノベーションや起業の手段としても有効であり、都市部の人材を活かすという視点から地方創生に資する面もあると考えられます。

企業には副業や兼業を柔軟に認めて欲しいものの、労働時間や会社情報の流出など課題もあるので、部署や役職などに応じて経験やスキルが活かされる臨機応変な対応が望まれます。次回(2月)は副業の受け入れ先となる地方企業の後継者不足や副業人材の活用、さまざまな施策が講じられている地方自治体の事例、都市圏人材と地方企業をつなぐ仕組みなども交え、ポストコロナに向け「副業・兼業」を通じた地方創生について考えていきたいと思います。

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