ウィズコロナ時代に移住で考える地方創生① 地方へ移住して仕事をしたい若い世代が増加へ
亀和田 俊明
2021/04/30 (金) - 17:00

先日、発表されたパーソルキャリアの調査で、地方へ移住して仕事をすることに興味を持っている正社員の割合が29.2%に上っていたほか、年代別では20代が37%と他の年代よりも多く、若い世代の関心が高い特徴がありました。地方移住に興味を持っている人では、「地方に住んで、その地方の企業で働きたい」が48.9%、「地方に住んで、首都圏の企業にリモートワークなどで働きたい」も51.1%、と興味が高まっていることが分かりました。今回から3回にわたって移住の現状や支援制度、自治体の取り組みなどを紹介してみたいと思います。

コロナ禍で東京都は8ヵ月連続で約2万5千人の転出超過

1月に発表された地域間の人口移動状況を知ることができる「住民基本台帳人口移動報告」(2021年・総務省統計局)によれば、2020年の日本国内における市区町村間移動者数は525万5721人となり、前年に比べ2.7%の減少。都道府県間移動者数は246万3992人で、前年比4.1%減でした。月別に移動者数を追うと、新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が発出された4月は減少に転じ、5月は最も大きな減少幅となりました。その後、6月には増加に転じたものの、7月から10月は再び減少しましたが、11月と12月は増加に戻りました。

2020年の都道府県別の転入者数は、東京都への転入者数が43万2930人で最も多く、次いで、神奈川県、埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県、福岡県が続き、これらの7都府県で57%を占めています。なお、7都府県も2019年に比べれば軒並み減少しており、前年に比べて転入者数が増加しているのは、福井県(807人)、長野県(736人)、茨城県(263人)、山梨県(22人)のわずか4県だけでした。

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(出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」より)

一方で転出者数も東京都が40万1805人で最も多く、次いで、神奈川、埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県と続き、6都府県で転出者総数の48.5%を占めています。転入超過数では、上のグラフのように東京都が3万1125人と最も多く、次いで神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、沖縄県、滋賀県の8都府県で転入超過となり、前年に比べ転入超過数が拡大しているのは1府3県で、最も拡大しているのが大阪府でした。

さて、東京都の転入超過数は2019年の8万2982人から2020年は約6万人の減少となりましたが、昨年7月から今年2月までの8ヵ月間で、転出が転入を約5万3千人上回る「転出超過」となっています。2020年はコロナ禍で東京都の企業でのリモートワークが普及したことなどもあり転出超過に転じています。特に23区内に住む30代から40歳代が顕著で、都心から都下の多摩地域、通勤圏内の郊外へ移り住む流れや地方への移住が進んだ年となりました。

総務省のまとめによると東京都の人口は新型コロナウイルスの感染拡大が続いた昨年7月から今年2月までの8ヵ月間で転入者が21万2659人だったのに対し、転出が23万8057人で、転出が転入を2万5398人上回る「転出超過」となっています。下表のように2020年7月以降「転出超過」が8ヵ月連続で続いています。なお、転出先の約55%は神奈川県(9万1669人)、埼玉県(7万4659人)、千葉県(5万6186人)といった隣接する首都圏の3県です。

東京都・月別人口の移動状況

実際には首都圏内での移動がまだまだ中心で、大阪府の関西圏や愛知県の中京圏と「2020年の移住相談の傾向、移住希望地ランキング」(ふるさと回帰支援センター)で窓口相談者の上位に並ぶ北海道(7位)、福岡県(4位)、静岡県(1位)などは約2割程度と地方への関心の高まりほど未だ実数は多くありませんが、今後、リモートワークの一定の定着は見込まれるので、地方分散の動きはこれから進んでいくといえるでしょう。

テレワークの推進や地域おこし協力隊の取り組み強化

年初の施政方針演説で菅義偉首相は、最近の都市部から地方への人の流れを踏まえ、ポストコロナを見据えたテレワーク環境の整備や地方移住への後押しなど地方創生や働き方改革の取組にも言及しましたが、2021年度の重点施策の一つが、「新たな日常」が実現される地方創生、です。地方創生の推進として、まち・ひと・しごとの創生と強靭かつ自律的な地域経済のため、地方の創意工夫をいかした自主的な取組を政府一体となって支援するとしています。

移住関連については二つの事業が注目されますが、一つは地方公共団体が地方創生に向けて複数年度にわたり取り組む東京圏からのUIJターンの促進や地方の担い手不足対策などの先導的な事業を安定的・継続的に支援することにより、地方の創意工夫を引き出し、実情に応じた地方創生の取組を推進するという「地方創生の充実・強化を図るための地方創生推進交付金」があります。

もう一つは、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にテレワークが普及し、地方移住への関心が高まるなど国民の意識・行動の変容が見られることを踏まえ、魅力ある仕事を地方に作り出すとともに、東京圏への一極集中是正を図るため、情報提供の強化、企業による取組の見える化等に向けた調査・広報を実施し、地方創生に資するテレワークの推進による地方への新たな人の流れの創出に向けた環境整備を行う「地方創生テレワーク推進事業」があります。

また、総務省は2021年度から「地域おこし協力隊」制度を拡充するといいます。2020年度で約5500名の隊員が全国で活動していますが、2024年度に地域おこし協力隊の隊員数を8000人とする目標に向け、「地域おこし協力隊インターン」として2週間~3ヵ月間のプログラムを加え、参加者が地方により長く滞在し生活を経験してもらうことで、移住の増加につなげたい意向のほか、1~3年の長期枠では空き家改修の経費を補助する制度等も新たに設けられました。

地域おこし協力隊の取組強化

要件緩和でテレワークによる移住等も支援金の対象に

地方移住の促進のために東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)から地方へのUIJターンによる起業・就業者の創出等を地方創生推進交付金により支援する「地方創生移住支援事業」と「地方創生起業支援事業」が2019年から実施されています。地域の重要な中小企業等への就業や社会的起業を行う移住者を支援する「移住支援金」と地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点を持った起業を支援する「起業支援金」です。

移住支援金は東京圏からのUIJターンの促進と地方の担い手不足対策のためのもので、東京23区(在住者または通勤者)から東京圏以外へ移住し、移住支援事業を実施する地方公共団体がマッチング支援の対象とした中小企業等に就業した場合に最大100万円(単身は最大60万円)支給されます。なお、コロナ禍でテレワークが進みましたが、今回から移住先でテレワークにより移住前の業務を継続する場合も対象になるなど要件緩和が行われました。

【地方創生移住支援事業・起業支援事業】
地方創生移住支援事業・起業支援事業
(資料:内閣官房・内閣府総合サイトより)

移住先での要件

受給に当たっては、移住して就業等の後、移住先の市町村へ申請し、市町村より移住者へ移住支援金が支給されます。支援金の受給には移住先の自治体が同事業を実施していることが必要です。詳細については移住される地域の同事業を実施する自治体の窓口などで確認ください。

起業支援金の事業分野は子育て支援や地域産品を活用する飲食店、買い物弱者支援、まちづくり推進などの地域課題が想定され、事業立ち上げに向けた伴走支援と最大200万円が支援されます。東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業や起業地に居住中、または居住予定などが対象となっており、地方へ移住して社会的事業を起業した場合には最大300万円(単身の場合は最大260万円)が交付されます。

さらに、移住支援については厚生労働省の「移住者を採用した中小企業に対し、その採用活動に要した経費の一部を助成」や国土交通省の「移住者が住宅の建設・購入を行う場合に住宅金融支援機構が提供する住宅ローンの金利の引き下げ」のほか、起業支援についても中小企業庁の「設備資金及び運転資金について日本政策金融公庫の融資による支援」など各省庁との連携も図られます。

2000年から2015年の15年間で、地方の若者人口(15~29歳)は、約3割(532万人)の大幅な減少となっています。「東京一極集中」の是正や地方の担い手不足への対処、地方で子育てをしたいなど移住者の多様な希望を叶えるため2018年に「わくわく地方生活実現政策パッケージ」が発表され、若者を中心に東京圏からUIJターンによる起業や就業者の創出を6年間で6万人見込んでいますので、移住・起業支援事業が期待されています。

次回は、移住が増えている自治体の要因と移住増を図る取り組みなどを紹介します。移住支援金ばかりか、コロナ禍で移住相談会も開催できないなか、オンラインによる相談会や現地案内などを実施するほか、移住希望者の相談に乗る「移住コンシェルジュ」の配置、廃校や空き店舗合を活用したコワーキングスペースやシェアオフィスの開設など受け入れ態勢の整備などが積極的に進められています。さまざまな施策が講じられている地方自治体における移住支援制度や実態などについて最新の事例を交え、「移住」について紹介していきたいと思います。

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