お客様を驚かせたい、楽しませたい。食を通じて、幸せの輪を広げる「食産業」をめざして(前編)
GLOCAL MISSION Times 編集部
2022/01/21 (金) - 16:00

「ハンバーグレストラン びっくりドンキー」の名は、誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?全国に300店舗以上を展開するこのレストランを経営するのは、株式会社アレフ。1968年に盛岡で創業。「人を良くすると書いて、食。食に関わる我々は、人を良くしていく産業でなければならない」という志のもと、安全・安心な食材の調達や農業支援、環境保護活動などに取り組み続けてきました。「びっくりドンキー」が長く愛され、発展し続けてきた秘訣は何のでしょうか?同社のびっくりドンキー店舗運営部 関東ゾーン 第1・第3エリアリーダー*堀 雅徳さんにお話をうかがいました。

*2019年5月当時

盛岡から全国へ。苦難と成功が今の原点

びっくりドンキーは盛岡で、「ハンバーガーとサラダの店・べる」という名前で創業しました。その後、5店舗ほどの出店を重ねるなか、札幌にある経営不振の大型レストランの経営を支援することになったのだといいます。札幌の2店舗を引き取ったものの、うまく経営を立て直せない状況が続きましたが、メニューを切り替えて、一新したところ業績が回復。札幌で店舗を増やしながら苦難と成功を乗り越えていったことが、びっくりドンキーの原点となりました。

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創業店「ハンバーガーとサラダの店・べる」

2つ目のターニングポイント

同社は、経営の考えを「商業界」「ペガサスクラブ(チェーンストア研究団体)」「ジット経営研究所」から学び、取り入れてきました。

「商業界」からは、商人としての理念や志を、「ペガサスクラブ」からは、日本の暮らしを豊かにしていくという大きな目標の中で、企業としての社会的使命を学んだといいます。

「ジット経営研究所」からは、Just In Timeという徹底した無駄取りの思想と技術を学び、結果、誰が焼いても同じ品質のハンバーグを提供できるシステムを開発しました。工場では、カット野菜のフレッシュ化(リードタイムの短縮)に取り組めるようになったのも、大きな成果になったのだといいます。

「私が入社した当時は、“これは2分焼くんだ”ということしか教わりませんでした。時計はなく、みんな感覚で焼いていました。感覚ではなく、きちんと時間を計れば、誰が焼いても同じ品質でできあがる。この当たり前の気付きと実践が画期的でした。」

堀 さんは、当時をこう振り返ります。

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そして、アレフの理念と志を共有してくれた、フランチャイズの加盟社や生産者たちとの出会いが、同社の成長を促す大きなターニングポイントになりました。

「直営店だけだったらここまで広がらなかったし、生産者の方の協力がなければ安心安全な食材の提供もできなかったでしょう。非常に大きなポイントだったと思います。」

全国の生産者と連携。安全・安心な食材を開発

びっくりドンキーでは、BSEの発生リスクが少ないニュージーランドとオーストラリアで、成長ホルモンを使用しないで飼育をしているアレフナチュラルビーフを採用しています。牛にイヤータグを付けて飼育から出荷までを行っているのも特徴です。

「私が美浜店の店長をしていた時に、BSEの問題が発生したんです。その当時、焼肉を含めて、牛肉を扱う店の業績はガタ落ちでした。でも、当社がそういった取り組みをしていることをしっかりアピールできたことによって、早く回復できたんです。その時に、食の安全・安心に真剣に取り組むことの大事さを再認識しました。」

あえて宣伝しなくても、コツコツとやってきたことが、お客様との信頼関係につながることを堀さんは学んだといいます。

また、びっくりドンキーではお米にもこだわっています。極力農薬と化学肥料を使わないお米を栽培するために研究開発を進め、農家の負担も考慮して除草剤を1回のみに抑えたお米を展開。この想いに賛同してくれる約700名の生産者の協力を得ています。

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契約農家さんが保有する広大な省農薬米たんぼ

もう1つ力を入れているのが、環境負荷を減らす取り組み。

「環境問題が社会問題なのであれば、それを解決ことすることが、企業の存在根拠になる。だから自分たちで発生している環境負荷に関しては、自らで解決しなさい、という発想です。それが創業者のメッセージでありルーツであり、生ごみの再資源化を店舗で実施しています。」

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リサイクルユースは、環境に対する従業員の意識向上にもつながっているという

当初、堀さんは、なぜ生ごみを分別しなければならないのかと不満に思っていたといいます。「箸などが生ごみの中に混入されていて、なかなか堆肥にできないじゃないかと怒られることもありました。しかし、生ごみの使い道についての理解が、従業員一人ひとりに浸透してきてからは、生ごみに不純物が入らなくなってきて、肥料にも使いやすくなってきました。だから従業員もこの取り組みを通じて、環境に対する考え方を学ぶことができたのです。」

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今回お話を伺った、びっくりドンキー店舗運営部 関東ゾーン 第1・第3エリアリーダーの堀 雅徳さん

食は人を良くすると書く。この志が会社を成長させた

「食は、“人を良くする”と書く」。これは、同社に受け継がれてきた創業者の志です。お客様に安全で安心な食材を調達して提供すれば、人だけではなく、人に関わる環境や農業、生き物など、食に関わるすべてが良くなっていくという考えから、同社は環境や農業にも関わってきました。

「入社した頃は、何をやっているのかわかりませんでした。ところが、びっくりドンキーでやっていることはすべて食産業を良くすることにつながっていて、無駄なことはない、と言われてハッとしたんです。いわゆる「外食産業」だけでは、ただ食材を用意して、調理をして、販売して、ありがとうございます、で終わってしまう。でも「食産業」は、そうじゃない。食材の調達・生産から、販売までトータルにプロデュースし、マネジメントしていかなくてはならない。こうした視点があったからこそ、自ずとその中の問題点を解決していこうと思えるようになり、結果、事業も多岐に渡っていったのではないでしょうか。」

こうした企業努力もあり、ここ数年の同社への新入社員は、アレフの取り組みを理解して応募してくることが多いといいます。

「自分たちの家族に誇れる仕事、商品を食べてもらった時に胸を張ってお金をいただける、そういう商売をしている自負は大きく、理念が1人1人に浸透していることが、企業のエンジンになっているようです。」

変えてはいけないところは変えない。守るところは、守る。

一般的には食器も効率を重視し、大きさや重さについても持ちやすいように考えます。しかし、びっくりドンキーが使用しているのは、大きな木製で、けっして合理的とはいえません。しかし、堀さんは、いつも先輩から、「あれがあるから、うちらしさがあって、お客様に価値が伝えられていくんだよ」と教えられたといいます。

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「お客様を良い意味で驚かせたい、楽しませたいという考えが店づくりの根底にあるんです。お腹もいっぱいだし、帰るときも車の中で、今日は美味しかったね、楽しかったね、と語り合ってもらえるようなレストランでありたい。お腹も心も満たしたい。内装だけでなく、商品名だったり、商品のデザインだったり、盛り付けだったり、食器だったり、すべてにそういった想いがあって、設計されているのです。」

びっくりドンキーには、一般のファミリーレストランにあるドリンクバーやサラダバーが設置されていません。それは、ほかと同じことをしていても、面白くないし、びっくりドンキーに行こうというきっかけにはならないからなのだとか。

「その分もっと商品を磨き込みしていこうじゃないかと考えることができます。チェーンストアの考え方でいうと、標準化・単純化・差別化という3S主義があります。当社も作業の単純化と標準化はしていきます。でも、差別化の部分においては、他社と違うことをしていこうと。変えてはいけないところは変えない。守るところは、守る。だけれど、変えていかなければならないところは、変えていく。ただし条件があって、一歩一歩、丁寧に変えていくと。私もその通りだなと思っています。」

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株式会社アレフ びっくりドンキー店舗運営部 関東ゾーン 第1・第3エリアリーダー

堀 雅徳さん

埼玉県出身。住宅メーカーを経て、第2新卒で「アレフ」に入社。4店舗目で店長に昇格。複数の店長や工場経験を経験した後、現職。宝塚店長時代には、中学生の職場体験の受け入れも初めて実現させた。

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