―特別連載 vol.3― 豊かな自然と住環境に恵まれた文化都市 信州・松本暮らしの魅力とは?
亀和田 俊明
2023/12/28 (木) - 09:00

信州・長野県で創業し、現在も本社を構えるとともに県内に多くの事業所を置くエプソンの事業や仕事などについて、2回にわたって触れてきましたが、今回は2022年9月に同社と「包括連携協定」(https://www.glocaltimes.jp/9899)を締結した「松本市」について紹介します。同社へのUIターン者の多くが暮らす中核市ですが、最近では居住者の居住環境の満足度も高評価を得ているといいます。「移住と暮らし」という視点から「松本市」について、自然や気候などの環境をはじめ、交通・アクセス、医療や育児・教育といった生活・居住までさまざまな視点から現状や魅力に触れますので、移住を考える上で参考にしていただければと思います。


生活・居住が1位と高い評価を得て8位へランクアップ

森記念財団都市戦略研究所の経済規模や文化度などを都市力として136都市を対象にした「日本の都市特性評価2023」によれば、松本市は8位にランクインしました。生活・居住分野で1位と極めて高い評価を得ており、特に居住者の居住環境の満足度を得たことが要因と考えられています。さらに、環境分野も昨年の7位から4位へ上昇しているほか、文化・交流分野は15位ですが、観光客誘致活動は136都市中、1位を獲得しています。

松本市は、長野県のほぼ中央に位置する県内2位の人口約24万人の都市。北アルプス、上高地、美ヶ原など雄大な自然を有する一方、古くは信濃国府が置かれ、現在でも国宝松本城を中心とした城下町の風情を残す街並みや快適な都市機能を有するバランスの取れた街です。市街地は自転車で一周できるほどコンパクトですが、県内最大の面積を誇るので、エリアによって多様な表情や魅力を見せる都市でもあります。

夏は東京や大阪などに比べ気温が低く、湿度も低いため、カラッとしています。冬は冷え込むものの、四季がはっきりしているだけに、季節感を感じられます。平年の最深積雪は26cmと多くなく、雪が長期間残ることもありません。年間の日照時間の合計値は2134.7時間と日照量も多く、年間の降雨量も1045.1時間と少ないため、過ごしやすい気候です。1991年から2020年までの平均気温は下表のように12.2度で、2020年は13.1度と上がってきています。

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県内唯一の「松本空港」(愛称:信州まつもと空港)は国内で最も標高の高い657.5mに位置し、“日本で一番空に近い空港”といわれますが、松本市中心部から南西約9kmにあります。長野県が設置・管理する地方空港ですが、定期便は国内線のみで、国際線は就航していません。長さ2,000mの滑走路1本ですが、国内線はフジドリームエアラインズと日本航空の共同運航便が、札幌(新千歳・丘珠)や神戸、福岡などに就航しているほか、日本航空は大阪(伊丹)へ運行しています。
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同空港近くの信州スカイパーク内にはサッカー、ラグビーなどに使用されるフットボール専用スタジアム「長野県松本平広域公園総合球技場」(サンプロ アルウィン)がありますが、エプソンがスポンサーとして応援しているサッカーチーム『松本山雅FC』のホームグラウンドでもあります。多くの市民や地元企業が支える「地域クラブ」ですが、その活躍により市民にも愛され、活気が生まれています。

東京・新宿まではJR中央東線で約2時間半、名古屋まではJR中央西線で約2時間の距離です。また、新宿と松本を約3時間で結ぶ中央高速バスもあります。松本市内を走る鉄道はJR3路線とアルピコ交通です。バスは市街地循環バスやコミュニティバス、市営バスが運行。車を主な移動手段とする家庭も多く、自動車渋滞の緩和や交通事故のリスク回避、自動車に過度に依存する暮らしを見直すパークアンドライド事業も導入されています。なお、車で東京まで約220㎞、名古屋まで約200㎞の距離にあります。

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基本構想2030は「豊かさと幸せに挑み続ける三ガク都」

また、2023年3月に国土交通省から各地の公示地価が発表されましたが、松本市の商業地の平均変動率はマイナス0.1%で3年連続の下落となりました。新型コロナウイルス感染症の影響からは回復傾向にありますが、上昇するエリアと下落するエリアの二極化が進んでいるといいます。一方で、住宅地はプラス0.7%で7年連続の上昇をみせています。同市内では働く世帯が多く、世帯分離も進み需要があると見られています。

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さて、さまざまな角度から紹介してきた松本市では、本格始動した総合計画の3年目、「第11次基本計画」の中間年を迎えることから「三ガク都のシンカ」に向けて、変革のスピードを緩めることなく、令和5年度予算においては、下表のように「人口定常化戦略」「新交通戦略」「ポストコロナ戦略」「ゼロカーボン戦略」「DX戦略」の5つの重点戦略を柱にすべてのギアを一段上げて「加速」させる年として位置づけ、予算編成されています。

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「基本構想2030」では、「豊かさと幸せに挑み続ける三ガク都」をキャッチフレーズに、基本理念として、三ガク都に象徴される松本らしさを「シンカ」(進化・深化)させるとしています。三ガク都とは、上高地や美ヶ原に代表される「岳都」、セイジ・オザワ松本フェスティバルやスズキ・メソードを育んできた「楽都」、旧開智小学校など古くから教育を重視してきた土地柄である「学都」ですが、これら松本の地域特性を最大限に活かした循環型社会の実現、そして、一人ひとりが豊かさと幸せを実感できるまちを目指す行動目標が示されています。

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働く女性や子育て支援も充実した居住満足度が高い街

松本市は、2001年から2009年まで転出超過で推移していましたが、近年は転入転出が均衡し、2018年からはプラスに転じ、以降は転入超過が続いています。2022年は、転入者数は10,075人、転出者数は9,246人と差引の社会増減は、長野県内最多の+829人(その他増減を含めると742人)となりましたが、県外からの転入超過数は大きく増加しており、首都圏からの転入超過数が増えています。

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同市の基本情報や移住者の体験等も掲載したパンフレット「信州まつもと広域圏丸ごと移住ガイドブック」は、市のホームページからダウンロードが可能。2019年4月に首都圏をはじめ県外から移住を考えている方の移住・定住の総合相談窓口として「まつもと暮らし応援課」が新設され、情報発信や動画開設などSNSの本格運用を始め、市の魅力を積極的に発信。東京・有楽町には「松本暮らし応援ブース」を設置。東京や名古屋、大阪などで移住セミナーも開催。

また、松本市では妊娠から出産、子育てに役立つ情報などを1冊にまとめた2023年度版「松本市子育てガイドブック」を発行しており、妊娠届時や転入時などに配布されているほか、出産・子育て情報を提供する「松本・大北地域 出産・子育て安心情報Webサイト」も開設。市内5ヵ所に設置された子育て支援センター「こどもプラザ」は遊び場としてだけでなく、保護者同士の交流や子育ての悩みを保育士や看護師に相談したりする場所として重宝されています。

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夜間および休日等の診察に対応する急患センターは、2005年に開設された松本市小児科・内科夜間急病センターがあります。判断に迷ったときは、小児救急電話相談や子どもの救急ホームページ、お子さんが急病になったとき等を活用しましょう。最寄りの医療機関を探すには、県が運営する「ながの医療情報Net」が便利です。市内の救急指定病院は、松本市立病院やまつもと医療センターなど9病院で、ドクターヘリは信州大学医学部附属病院を基地病院に運航。

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松本市には恵まれた自然環境と居住環境に加え国宝松本城や国宝旧開智学校など歴史や文化的な魅力もあふれています。近年、東京圏からの移住者が増えていることでも分かるように、相談窓口やさまざまな移住支援も充実しています。多様性への寛容度が高く、地域コミュニティでも受け入れる風土があるなど移住者にも優しく、自然がある静かな環境で仕事ができるほか、治安の良さなど安心して暮らせる要素もそろっています。都市の利便性を享受できる上に自然環境が共存した暮らしやすい松本市は、移住者にとって魅力的な街といえるでしょう。

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