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日本が誇る「祭り」リソースの未来像は/地域活性機構 リレーコラム
亀和田 俊明
2018/01/19 (金) - 08:00

5万件ともいわれる全国津々浦々で行われる「祭り」ですが、2015年ごろから訪日外国人客の増加とともに有力な観光コンテンツとして期待される中、2016年暮れに18府県33件の「山・鉾・屋台行事」がユネスコの無形文化遺産に登録され、関心を集めています。そうした祭りの現状と課題などについて探ってみたいと思います。

訪日外国人客にも高い人気の文化資源「祭り」

この時期、日本では冬ならではのさまざまな行事や祭りが各地で楽しめますが、1月15日に長野県の野沢温泉で行われた「道祖神祭り」も正月の注連縄や締め飾りなどを焼く「どんど焼き」のひとつと知られる300年以上の歴史を持つ日本三大火祭りです。国の重要無形民俗文化財にも指定されていますが、昨今は近隣の白馬スキー場などに宿泊する訪日外国人が観光客の半分以上を占めるともいわれています。

2015年ごろからの訪日外国人客の増加とともに、有力な観光コンテンツとして、「祭り」が注目されています。私が生で見た「祇園祭」や「博多山笠」、「高山祭」、「長崎くんち」などの主要な祭りでも全国からの日本人観光客はもちろん、アジア系を始め欧米系も含め多くの訪日外国人客が「祭り」を目当てに訪れていましたし、今ではこの傾向は東北から九州まで様々な地域の「祭り」で顕著といえます。

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欧米系を中心に多くの訪日外国人客が「高山祭」を目当てに訪れる

今や神輿、盆踊り、浴衣、縁日、屋台など日本の伝統文化を気軽に体感できる日本各地の「祭り」の場を訪れる訪日外国人客が増え続けるようになってきています。インバウンドが団体旅行から個人旅行へと移行する中、特にリピーター客にとって、地域の伝統行事を体験できる「祭り」を目的とする旅行は、家族や友人たちに語りがたいため、そしてSNSを通じて発信するための体験としても高い人気を誇っています。

目の肥えたリピーター客は「祭り」の魅力に惹かれ、大都市だけでなく地方の「祭り」にも押し寄せ、大きな存在となってきています。リピーター客は体験や交流を求めていますので、日本の文化を肌で感じられる「祭り」の集客効果は大きく、地方ではキラーコンテンツにもなっています。実際、「祇園祭」では山鉾巡行の際の曳き手不足もあり、最近では外国人ボランティア枠も設けられています。

「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に登録

さて、「祇園祭」や「秩父祭」のように日本全国で幾世代にもわたって地域で受け継がれてきた飾り付けが特徴の「山・鉾・屋台」を巡行させる祭礼、東北から九州までの「山・鉾・屋台行事」(18府県33件)が、2016年暮れにユネスコ(国連教育文化機関)の無形文化遺産に登録されました。登録により各地では観光客増への期待がかかるものの、反面、課題を多く抱えているのも事実です。

登録される行事はいずれも国の重要無形民俗文化財に指定され、屋台や山車などの修繕費用の半額は国で補助され、自治体の補助制度などもありますが、貴重で華麗な装飾などを直す費用負担は重いものがあるほか、特に地方では人口減少で寄付金が減少し、経費の捻出が厳しく、自前の積み立て金で賄うほか、修繕などは地元の職人、住民などで対応せざるを得ない状況があります。

また、少子高齢化による担い手不足なども深刻になっており、曳き手などが足りずに町内会から市以外の地域に広げ、支援する人を増やしたり、伝統文化を学ぶ研修の場として参加する自治体の職員や教員、留学生などにサポートを受けるケースも増えてきていますし、石川県・能登では「祭り」の体験事業として関わる学生の長期インターンシップが設けられている例もあります。

2017年5月には、登録された「祭り」開催地の8県13市の自治体でつくる「山・鉾・屋台行事観光推進ネットワーク」が設立され、世界に誇れる「祭り」を観光誘客に生かし、交流人口の増加を目指すために連携して行事の魅力をPRしていくことが確認されていますが、費用負担や担い手不足といった課題にも地域を越え、新しいアイデアにより積極的に取り組み、対処していくことが望まれます。

新たなトライアルが地域の「祭り」に活性化を呼ぶ

そうした中、全国の祭り関係者の間で話題を呼んだのが、2017年に実施された「祇園祭」でのクラウドファンディングの活用です。祇園祭山鉾連合会が、「祭り」の警備費や保険料の一部を調達するために初めて募集したところ目標の300万円を早々にクリアし、1.300万円に到達し、「祭り」への関心の高さが裏付けられると同時に、実施には大きなコストがかかることが知られるところとなりました。

2016年は運営費が4.000万円に達し、行政の補助や鉾を出す町の支出だけで負担することが難しくなっていたことが背景にあります。今回は、3.000円から10万円まで5コースが設定され、厄除けちまきや関係者にしか配られない扇子などが特典として用意されました。同様にクラウドファンディングを活用する祭りも長野・飯綱高原観光協会の「飯縄火まつり」など増えてきているといいます。

2017年5月の連休に、内閣府の「地方創生カレッジ」講座企画の下調べで三つの祭りを観るために岐阜から富山、石川の訪日外国人にも人気の高いいわゆる「昇龍道」を巡ってきました。高山市では、今回の登録を記念して春と秋の祭り屋台が一堂にそろう「高山祭屋台の総曳き揃え」、高岡市の「御車山祭」は本番を、七尾市の「青柏祭」や南砺市の「福野夜高祭」は直前の準備の様子を観ることができました。

「御車山祭」は、生憎の天候で恒例の「勢揃式」は中止になったものの、山車は巡行しました。当日は平日でしたが、若者や子どもたちが街にあふれ活気に満ちていました。というのも市は、「高岡の歴史文化に親しむ日」として小中学校と特別支援学校を休校にしていたほか、山車や祭りの歴史などがパネル展示された御車山会館は当日に限り無料で入場できるような計らいがありました。

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小中学校などが休校になったことで多くの子どもたちが山車の巡行を観覧

また、南砺市の「城端曳山祭」に合わせて開かれた全国山・鉾・屋台保存連合会の総会の際には、保存・修理に携わる技術者研修会が行われました。一方、富山県小矢部市では、教育委員会が曳山の継承へ曳山の現状や修繕の必要性などを把握するための詳細調査が開始されるなど、費用負担の課題についての新たな取り組みも全国各地でさまざまな形で始められています。

地域コミュニティの絆や調和、再生の鍵は「祭り」

独特の風土の中、熟成され受け継がれてきた伝統や文化が、日本各地には今なお息づいていますが、「山・鉾・屋台」だけでなく、地域共同体の中心に位置づけられる様々な「祭り」は、無病息災や五穀豊穣などを願うほか、死者の魂や神々を慰撫するなど地域の絆や調和は「祭り」において保たれるなど、まちづくり、コミュニティづくりにも役立ってきましたし、地域の求心力でもあります。

日本文化に対するアイデンティの再確認、再構築の好機と捉え、時代を超えて継承され、歴史と人々によって形成された日本文化、「祭り」に光を当てることで、人々と伝統との関わり方を見つめ直し、「祭り」の有する地域コミュニティ再生という機能に注目し、「祭り」への参加を通して地域住民としての資格・地位を再確認し、心理的安定を得ることに繋がるのではないでしょうか。

「祭り」は、まちづくりに欠かすことのできない手法でもあり、少子高齢化が進む中、今後も時代を超えて「祭り」を守り続けていくためには、新たなアプローチと取り組みが必須です。伝統の継承という側面だけではなく、若者と高齢者との世代間交流の場として、各地域での「祭り」を核とした取り組みが、新しいまちづくりとしての可能性、自力で街を活性化してく弾みとなります

「祭り」は、高い経済的効果をもたらす誘客手法でもありますが、それを継承、保持してきた地域住民にとってのアイデンティティの源といえます。地域住民の伝統文化意識を醸成させ、学校と連携して伝統文化の学習などを通じて地域社会での活動に主体的・積極的に参加できる人材の育成など「祭り」を核とした地域のコミュニティを活性化させていく施策が今、望まれています。

さまざまな地方の「祭り」を訪ねる中で、日中は通行人も少なく、空き店舗も目立つ商店街の街で、「祭り」本番を迎えると関わる氏子や町内会などの方だけでなく、町中の人が1年を待ちわびていたようにどこからともなく現れ、「祭り」の成功を願う姿を見るにつけ、絶えることなく地元の方々が継続、継承させてきた「祭り」は、地域の誇りであり、地域の結束力に他ならないと思わざるを得ません。

地域外の人を受け入れたり、女性禁制だった「祭り」にも女性の参加が認められるようになったり、外国人も参加できたり、クラウドファンディングが活用されたり、と時代と共に新たな動きも現れていますが、今後は「祭りが生き残るためには、時代に合わせて変わることも必要」、「老若男女が楽しんでこそ、本来の祭りの意義がある」という『中世京都と祇園祭』の著書もある脇田晴子さんが指摘されるような柔軟な発想が求められています。

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