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自転車を活用したまちづくりと地域活性化(前編)/地域活性機構 リレーコラム
亀和田 俊明
2018/12/14 (金) - 08:00

欧米を中心とした主要都市では、環境、エネルギー、健康などの諸問題を背景に国や自治体が自転車の利用に関してさまざまな施策を講じてきました。こうした自転車によるまちづくりの推進はSDGsの観点からも重要なテーマとして捉えられますが、今回はわが国おける「シェアサイクル」を巡る現状と課題から今後の地域活性化について考えてみたいと思います。

2018年3月現在、「シェアサイクル」は132都市で導入

3ヵ月ほど前に新聞記事やユーチューブ映像などで、中国の都市部で自転車が大量に放置されているショッキングな画像を目にしました。欧米に端を発した「シェアサイクル」ですが、中国では施錠や開錠、支払いまで全てアプリで簡単に利用できる便利さなどから都市部で大ブームを引き起こしました。その結果、次々に運営会社が参入したことで過当競争に陥り、倒産が相次ぎ、公道に乗り捨てられた自転車を地方政府が撤去して保管場に集めたという光景でした。

もちろん、日本では中国のようなことはありませんが、昨今では、首都圏ばかりでなく、「シェアサイクル」は地方都市へと広がりを見せています。パーク24の同社会員を対象とした「シェアリング経験」について尋ねたアンケート調査では、カーシェアの認知率86%に比べれば低いものの、駐車場シェアの26%や個人間シェアやライドシェアの1割程度を上回る30%が「シェアサイクル」について「知っている」と答え、15%が利用していることが分かりました。

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セブンイレブンは「HELLO CYCLING」と提携しサイクルポートを提供

通勤や通学や買い物など日常の移動手段として、名所などを巡る観光利用、周遊のための移動手段として、2018年3月現在、全国で「シェアサイクル」が導入されているのは、132都市にのぼります。また、2017年度末までに「シェアサイクル」の社会実験を実施しているのは18都市、「シェアサイクル」の本格導入や社会実験を検討しているのは47都市もあり、「シェアサイクル」の本格導入の予備軍ともいえる都市数は増加することが予想されます。

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(資料:国土交通省資料より筆者作成)

それぞれの実施都市へのアンケート調査で、導入目的としては、「観光戦略の推進」や「地域活性化」、「公共交通補完」といった項目が高い数値となっており、「環境負荷の軽減のため」や「健康増進のため」、「自動車利用の抑制のため」、「放置自転車の削減のため」などと続きます。導入都市が増えるとともに、ポート数も年々増加傾向にあり、東京などでは密度も高まっているといいます。

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(資料:国土交通省資料より筆者作成)※複数回答あり

前述の世界で最も台数の多い中国の上海をはじめ、パリ、ロンドン、バルセロナ、ニューヨーク、モントリオール、ブリスベン、台北など現在、世界各国で導入が進んでいる「シェアサイクル」は、他の人と自転車をシェア(共有)し、必要なタイミングで利用する仕組みや方法のことを指しますが、都市の新たな公共交通機関として、街の活性化を担う移動手段として、環境問題やエネルギー問題などとも相まって注目されています。

自転車活用推進計画で自転車の利活用環境の整備へ

2018年6月に「自転車活用推進計画」が閣議決定され、いよいよ本格的に自転車の利活用環境が整備されていくことになりました。自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成、サイクルスポーツの振興等による活力ある健康長寿社会の実現、サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現、自転車事故のない安全で安心な社会の実現などが目標として掲げられているなかで、「シェアサイクル」の普及促進も含まれています。

■自転車活用推進計画の要件(自転車活用推進法第9条)

政府は、自転車の活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、前条に定める自転車の活用の推進に関する基本方針に即し、自転車の活用の推進に関する目標及び自転車の活用の推進に関し講ずべき必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を定めた計画(以下「自転車活用推進計画」という。)を定めなければならない。


自転車の活用の推進に関する基本方針(法第8条)では、自転車の活用の推進に関して、重点的に検討、実施されるべき施策には「シェアサイクル」施設の整備も挙げられています。今後、公共交通機関との接続強化やサイクルポートの設置促進などにより普及を図ることが望まれるほか、歩行者・自転車中心のまちづくりと連携する自転車通行空間の計画的な整備も必要になるでしょう。

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(資料:国土交通省資料より筆者作成)

「シェアサイクル」は、各所に配置された自転車を好きなサイクルポートで借り、自転車で目的地まで移動し、目的地の近くのポートに返却するというシステムです。現在、自転車が置かれたポートは、貸出も返却も無人管理が基本となっていますが、①自転車ロック式(自転車に組み込まれたロック制御盤で操作) ②ポートラックロック式(ポートに設置されたラックでロック操作) ③駐輪場ゲート併用式(自転車に取り付けたICタグで管理)に大別されます。

また、大手の利用料金は30分で100円から150円程度で、予約しないで借りる場合は登録したICカードやスマホをかざして借り、予約して借りる場合はスマホでパスコードを発行して借ります。料金の精算については、現金のほか、SUICAやPASMOなど交通系ICカードやクレジットカード、携帯払いで使用できますが、最近では専用アプリをスマホにダウンロードし、自転車のQRコードをスキャンして利用できるなど多彩になり、利便性も高まりをみせています。

事業の採算性とサイクルポート設置場所の確保が課題

「シェアサイクル」の導入都市及びサイクルポート数は、これからも増えていくことが予想されますが、欧米に比べ自転車台数やポート数など平均的な規模が小さいほか、回転率も低いものがあります。また、設置個所は公有地と私有地が半数となっているといいます。海外では、バス停留所や鉄道・地下鉄駅前など利便性の高い路上にサイクルポートが設置されていますが、わが国でも鉄道駅の周辺において設置が推進されることが望まれます。

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(資料:国土交通省資料より筆者作成)

現在、「シェアサイクル」を展開する大手は、NTTドコモの「ドコモ・バイクシェアスマートシェアリング」、ソフトバンクグループ・Open Streetの「HELLO CYCLING」、中国の「Mobike」、大和ハウスパーキングとオーシャンブルースマートと京阪電気鉄道の「PiPPA」、ベンチャー・コギコギの「COGICOGI」、メルカリ子会社ソウゾウの「メルチャリ」6社で既存事業とのシナジー効果による利用者囲い込みという狙いもあるでしょう。

自治体へのアンケートで課題については、「事業の採算性の確保」が最も多く、「ポート設置場所の確保」などが上位に挙げられていますが、今後、効率的な自転車の配置によるコスト削減も図っていかなければならないでしょうし、サイクルポートの設置を促進するためには、路上や既設駐輪場の公共用地や公開空地、コンビニなどの民有地への展開も考えていかなければならないでしょう。

コンパクトシティなどの都市政策においても新しい交通手段として、より官民が連携を図った取り組みが望まれますが、後編(12月28日掲載)では、地域住民や観光客などの移動手段としての自転車の利活用の実態を地方都市の事例なども交え、「シェアサイクル」とまちづくりの現状や地域活性化への寄与の観点から考えてみたいと思います。

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