経営共創基盤 塩野誠インタビュー
【塩野誠】「クリエイティブ」しか生き残らない/ポスト平成大予言
経営共創基盤取締役 塩野 誠さん
月刊事業構想 編集部
2019/01/09 (水) - 18:00

人生100年時代や少子高齢化社会を迎え、日本人の生き方と働き方は、これからどう変わっていくのか。本シリーズでは、有識者や第一線のビジネスパーソンに「未来の働き方」を予言してもらった。
第4弾は企業経営や人工知能に精通する、経営共創基盤の塩野誠取締役。
ポスト平成時代には「人も企業も地方も、クリエイティブでなければ生き残れない」と強調し、異分野からの学びや「妄想すること」の重要性を指摘する。


―塩野さんは著書『ポスト平成のキャリア戦略』(NewsPicks佐々木紀彦編集長との共著)の中で、日本に迫る大転換期や、日本人がこれからの時代を生き抜くために必要な行動・準備について解説されています。

塩野:「100年ライフ」という言葉にも表れていますが、日本人の寿命が伸びている今、人が“元服”するのが遅くなっている気がします。幕末や明治初期の写真を見ると、12-18歳ぐらいの日本人の面構えは完全に大人ですよ。でも今はそうじゃない。体感では“七掛け”、つまり今の30歳が昔でいう20歳ぐらいでしょうか。

元服が遅くなったということは、人生の“お試し期間”が伸びているということ。新卒で入った社員が3年で3割退職するということにも見て取れます。大企業に入ろうがベンチャーだろうが、関係なく辞めてしまう。

日本は世界でも有数に自由で安全な国。飢えることもまずありません。今の問題は、元服前の20代の若者たちが、「自由すぎて何をやれば良いのかわからない」ということ。“自由の刑”に処されているとも表現できます。機会はたくさんあるのに動こうとしない。受け身体質だし、横並び意識が昔より強くなっていますね。

物量がなければ、自由の中の選択肢は生まれない   

―ポスト平成時代を生きていくには、どんな力が必要なのでしょうか。

塩野:私が伝えたいのは、とにかく「クリエイティビティ」の大切さ。これからは、クリエイティブなもの以外は生き残らない時代になります。

あと数年もすれば、AIは当たり前のものとして社会に普及し、色々な物事をAIがやってくれるようになるでしょう。ここで言うAIとは機械学習です。機械学習は公約数をとること、つまり頻度が高い事象をデータから学習し、高精度で予測や仕分けをすることが得意。すると人間に残るのは、かなり分野を跨いだ知見の融合や、クリエイティブやアートの領域しかない。

クリエイティブに必要なものは何か。私の友人のクリエイターはほぼ全員、“物量”だと言います。何のアイデアを出すにしろ、まず物量を自分にインプットしなければいけない。物量は多ければ多いほど、幅が広ければ広いほど良い。全く関係のない分野の知識や経験が、飛んだアイデアに繋がったりする。

しかし、今の若者にはこの物量が全く足りていません。私は学生向け就職セミナーで講演することがあるのですが、いつも「今朝、新聞を読んだか」「月9ドラマをリアルタイムで見ているか」と問いかけます。100人学生がいて手を挙げるのは1人いるかいないか。“意識高い系”の学生でも「新聞読んで何の意味があるんですか」と言います。これが現実です。クリエイティブと同じく、自由の中の選択肢は物量からしか生まれないでしょう。

クリエイティビティがなければ仕事は奪われる。すごく残酷な世界です。ただ、逆を言えば、クリエイティビティを発揮し続けてさえいれば―何でも良いから息を吸うように妄想し、構想をし続ければ何とかなります。それに誰かが共感してくれれば、事業や仕事として成り立つ。インターネットのおかげで、遠く離れた人までもリーチできるようになり、コミュニティや同好の士を見つけるのは簡単になっていますからね。

音楽の世界で言えば、女性ラップシンガーのDAOKOさんは、楽器ができず譜面も読めなかったのにラップを自作し、動画サイトで脚光を浴びてレコード会社の争奪戦を巻き起こしました。センスやアイデアさえあれば、テクノロジーで何とかなる時代なんです。

―若者に変化の兆しは見えますか。

塩野:この1~2年でだいぶ“シーソーが傾いてきた”と感じるのは、若者の起業の傾向です。今までは、どちらかと言うと心にルサンチマンを抱えた若者が起業をしてきた。それが今は、「あいつはすごい、優秀だ」と周囲から言われるような若者や、理系博士号を持つ人が、有名企業ではなく起業の道を選ぶようになっています。

なぜそうなってきたのか。おそらく、自分の“友達の友達”くらいの近さに、起業して上手くいっている人やベンチャーの幹部として活躍している人が増えてきているからではないでしょうか。そういう人が視野に入ってくると「こういう生き方でいいんだ、起業っ
てできるんだ」と、意識が変わります。

ただ残念ながら、日本にはイーロン・マスクのようなロックスター的経営者がいない。20代の若者がまだ「ホリエモンさんはすごい」と言ってるぐらい、キャラ不足なんです。

企業や地方にもクリエイティビティが必要

―人だけでなく、企業や地方にもクリエイティビティが求められるのでしょうか?

塩野:まず企業ならば、終身雇用を前提に経営することは、もはや愚かですね。新卒に3年で辞めてもらいたくないのなら、学生との長期間のお見合いが必要。数日間のインターンではなく、アメリカのように大学在籍中に数年越しで数ヶ月間インターンをさせるぐらいの努力が求められます。また、優秀な人をできるだけ囲い込み続けたいのなら、優秀な人が活躍できる場と仕組みをつくるしかない。仮に、東大を出てPythonをばりばり書けますという人材を採用できたとしても、職場の隣の席のおじさんが仕事もできないのに自分より給料もらっているとしたら、辞めてしまいますよ。

―地方はどうでしょうか。

塩野:もっとクリエイティブになれるし、ミニ東京を目指すことに全く意味はないと言いたいですね。世界中からスキー客が集まるニセコを再発見したのはオーストラリア人です。日本人は外から言われるまでニセコの魅力に気づかなかった。もっと地方が稼ぐモデルがあるはずだし、再発見する余地があると思います。

もうひとつ、地方は良いものにはいくらでも払う市場=富裕層を狙うべきですね。美味しいものしか食べたくない、美しいものしか見たくないと言う富裕層は世界中にいます。日本の地方にそんな楽園をつくったら、どんな手を使っても富裕層は来ますよ。

アカデミア×地方にも可能性があると思います。シリコンバレーはド田舎ですが、圧倒的な妄想エッジが立っているから研究者やビジネスが集まる。実際日本の地方にも、国際教養大学(秋田市)や奈良先端科学技術大学院大学、はこだて未来大学など、格好良くて研究も尖っているアカデミアが沢山出てきています。今の時代は情報が多すぎて、一番尖った物事しか人々は思い浮かべられないし、記憶に残らない。地方にも言えることです。

経営共創基盤 塩野誠

経営共創基盤 取締役マネージングディレクター・パートナー 

塩野誠(しおの まこと)さん

1975年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、ワシントン大学ロースクール法学修士。ゴールドマン・サックス、起業、ベイン&カンパニー、ライブドア等を経て現職。戦略コンサ ルティング、M&Aアドバイザリー、各国政府ファンドとの協調投資に従事。政府委員、人工知能学会倫理委員会委員、MBAでの講師等を務める。JBIC IG Partners代表取締役CIO。著書に『ポスト平成のキャリア戦略』(佐々木紀彦氏との共著)他。

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