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地方における事業成功への第一歩。小さな事業を積み上げよ
木下 斉
2019/03/22 (金) - 08:00

地域での取り組みにおいて、行政計画などでは「地域活性化の起爆剤」なる言葉が威勢よく使われた、一発逆転を目指した巨大計画などが未だもてはやされます。はたまた、民間人でも周りで大きな成果を生み出した人たちなどをみると変な焦りを感じて、やはり一気に事業の拡大を求めて身の丈に合わない投資を目指す人もいます。いずれの場合には、その結果が素晴らしい成果につながることは少なく、むしろ足元を掬われて、事業的に失敗し、従来よりも大きな“地域における問題”を抱えてしまうことが多くあります。

一朝一夕に地域の抱える課題が解決するような事業はありません。一発逆転ですべての問題が解決してしまうような、魔法のような事業もありません。20年かかって衰退してきた問題は、20年かけて違うカタチでの再起を狙う必要がある場合が多いのです。

その時に重要なのは、小さな事業を蔑ろにしない、ということです。

まずは小さく一回しをして感覚を掴む

一般的に事業はその規模が大きくなればなるほどに複雑になっていきます。事業を立ち上げる際はさることながら、日々のオペレーションも複雑怪奇になっていくものです。いきなり難易度の高い事業に挑戦する前に、小さな事業で自分なりの事業執行能力を拡大していく必要があります。まずは前回のコラムにも書いたように、「先回り営業」を徹底して行い、黒字化を厳守するカタチで事業を進めてみると、事業の基本が理解できるようになります。

地域での初期事業は投資が限定的なため、事業開始に時間のあまりかからない取り組みで、まずは小さく一回ししてみることがとても大切です。ここで感覚を掴むと、少しずつ大きな事業に挑戦していくことが可能になっていきます。

ここで先回り営業を疎かにして、一方で過大な投資をしてしまうと、当然ながら赤字になる。この赤字を埋めるのに補助金に頼るようになってしまうと、以後、規模の大小関係なくずっとそのような事業の仕掛け方になってしまいます。しっかり顧客と向き合い、先回り営業で確保した売上の範囲に経費を留める。当たり前なことが出来ないのに大きな事業などは到底不可能です。だからこそ、何事も最初が大切で、小さくても、しっかりと経済原則に基づいて黒字化を実現する一回しが大切になります。これが全ての第一歩なのです。

「積小為大」の原則

どうしても他地域の大きな成果をみると、同じく大きな成果を得たいとそのまま真似してしまいがちですが、今大きく見える成果も、もともと大きな成果ではなく、小さな成果の積み上げで実現されているものが多いことを忘れてはいけません。

江戸後期における荒廃した農村再生で成果を残した二宮尊徳は「積小為大」という言葉を残しています。大きなものは大きなものとして存在するのではなく、小さなものを積み上げて大きなものが成立しているのだ、という意味です。また、彼は「大きな物事を成し遂げたいのであれば、小さなことをしっかり励むことが大切だ。成果をあげられない者は大きなものばかりを欲する割に、日々できる小さなことを疎かにして、なぜ大きな成果を得られないかと思い悩むだけだ」という意味のことを語っています。現代でも大きな成果を得たいと言いながら、細かな営業や経費のすり合わせなど地味なことを疎かにして失敗をしている事例を多数見ます。江戸時代も現代も、その点では大して変わりないのです。

そもそも成功地域では、成功してからメディアなどに出ると、華やかな一面ばかりが取り上げられますが、その前には多大なる失敗を繰り返し、軌道修正して、ようやく成果が出ているものばかりです。小さな事業を20年積み上げていった結果として、大きな成果につながっているものを“結果論”で大成功として取り上げ、良い点ばかりを見ても意味はないのです。

事業成果は常に移り変わるものであるため、積小為大という原則は実に残酷な側面もあり、小さな積み上げの努力を怠れば、事業は急速に縮小してしまうわけです。

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小さな事業から始めることが「近道な理由」

とはいっても、小さな事業はいつまでも小さいのではないか、と思われる方もいるかと思います。しかしながら、実際には大きな事業への近道です。

その理由は大きく2つあります。

1つは、金融的効果です。事業の利益を単に足し算するだけではいきなり大きくはなりませんが、実際の事業成果は「複利」で拡大していきます。儲かった資金を次なる事業に投資して、その事業がさらに利益を残す。小さくとも黒字にして一回しする習慣が最初についていれば、この循環を常に拡大していくことができます。

その事業の利益をもとにして、次は少し大きな事業を立ち上げていく。この循環を作っていくと、複利で資金が拡大して、手持ち資金だけでもそれなりに大きくなっていきます。そこに他の金融機関からの融資を組み合わせたり、クラウドファンディングなどでの投資融資で資金を集めていけば、着実に事業を拡大していくことができます。

小さなリノベーションからスタートしたものが、数年後に逆算でも十分な需要を確保できて、より大きな新築開発などにつながることもあります。小さなゲストハウスからスタートした事業が、旅館再生につなげる事業へと発展したりするわけです。

もう1つは、仕事が仕事を呼ぶ効果です。

小さな事業でもしっかり経営していければ、その地域では一歩前に出ます。一過性の事業であったり、予算依存の取り組みが多い中、しっかり自らの顧客と向き合い、その収入で事業を回し、資金を残しているものは、胸を張っていいものです。そうすると、不思議なもので様々な地域の人たちとつながるようになっていきます。「あのまちには、こういう取り組みしている人がいる」という情報は、今はネットを通じて様々なシーンで共有されていきます。そうすると、自ずと新たな事業のヒントを得られたり、共に事業に取り組む仲間を見つけられたりします。場合によっては、他の地域での事業の手伝いをする機会が巡ってきたりします。

自分が活用できる人脈や情報というリソースが拡大すると、地域で新たな取組みをより始めやすくなっていきます。

こうして、小さな事業から始めて積み上げていくと、結果的には大きな成果に結びついていくということがあります。「千里の道も一歩から」と言いますが、まさに地域の事業も同様です。

まずは小さな事業をしっかりと一回しすること。自立した小さな事業は、大きな事業につながる第一歩なのです。

【参考文献】
地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門 https://amzn.to/2O4Wkvt
稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書) https://amzn.to/2EbUIgc
まちで闘う方法論:自己成長なくして、地域再生なし https://amzn.to/2S3C5i

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