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地方への移住増で期待される地域の活性化(前編)/地域活性機構 リレーコラム
亀和田 俊明
2019/03/29 (金) - 08:00

地方都市では人口減少や若年層の流失という悩ましい課題を抱えていますが、最近では地方移住への関心が高まっており、特に30代までの若い世代の増加傾向が見られています。自治体の移住対策を始め、民間のさまざまな取り組みにより移住しやすい環境も徐々に整いつつあるようですが、今回から数回に分けて地方への移住の現状から今後の地域活性化について考えてみたいと思います。

移住相談件数、自治体セミナー開催数共に増加

昨年6月に発表された「わくわく地方生活実現政策パッケージ」では、若者を中心としたUIJターン対策の抜本的な強化が掲げられ、東京圏(一定の要件を満たす地域)から東京圏以外へのUIJターンによる起業・就業(事業継承含む)促進及び人手不足に直面する地域の中小企業の人材確保を図るため、地方公共団体による全国規模のマッチング支援、併せて地方創生推進交付金や雇用関係助成金を活用した支援を行うとあります。

■「わくわく地方生活実現政策パッケージ」(「地方創生」2018年度基本方針より)

1.UIJターンによる起業・就業者創出(6年間で6万人)
・全国規模のマッチングを支援するとともに、東京圏から地方への移住者の経済負担を軽減

移住支援については次回触れたいと思いますが、2月に発表されたふるさと回帰支援センターの「2018年の移住相談の傾向ならびに移住希望地域ランキング」で注目されたのは昨年の16位から初のトップ3入りを果たした北海道でした。相談窓口を設置したり、道内自治体がセミナーを開くだけでなく、週替わりで出張相談会を開催したほか、「北海道暮らしフェア」には1,150名が参加するなど積極的なプロモーションが功を奏したようです。

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(資料:ふるさと回帰支援センターの資料を基に筆者作成)

また、年間の相談件数は初めて4万件を超えて41,518件になり、10年前の3,823件から10倍以上に増えていることが分かりました。首都圏での移住相談会、セミナーを開催する自治体も大幅に増加しており、同センターで開催された移住相談会やセミナーも過去最多となる年間で539回が開催されました。他の自治体との差別化を図るために「移住」という言葉を使用しなかったり、対象を絞り込んだ相談会も増えているといいます。

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(資料:ふるさと回帰支援センターの資料を基に筆者作成)

年齢別では20歳代から40歳代の相談が約70%を占めていることや地方での生活経験がない東京圏出身者の相談が約40%を占めることから移住希望先として農山漁村という「田舎暮らし」だけではなく、仕事が見つけやすく、生活スタイルに極端な変化が少ない政令市や県庁所在地、中核市など地方都市へのニーズが高まっていると見られています。実際に参加した移住セミナーでも若者の参加が多く、女性の単身者も含まれていました。

増加するUIJターンでは就労の場、雇用が優先条件に

特に20代、30代の若者世代で半数の5割を占めていますが、退職後に移住を考えるような余裕のある田舎暮らしを志向するリタイア世代ではないので、一定程度の規模やインフラが整った地方都市への移住や仕事のことを優先せざるを得ないという事情もあるのでしょう。相談者の内訳としては、Jターンはさほど多くはありませんが、20代以下を除きIターンがUターンのほぼ倍に当たる比率になっているのが特徴です。

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(資料:ふるさと回帰支援センターの資料を基に筆者作成)

実際に大都市圏から地方都市へ移住する際には、Uターンで実家に戻る場合を除いては新たな住居を確保しなければなりませんが、最も大きな課題は、仕事、「就労の場」を確保することになります。同センター調査でも「就労の場があること」の数値が年々上がってきており、全体に占める比率も他の条件を圧倒しています。この数値にも働き盛りである若い世代が多いことが反映されているといえるでしょう。

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(資料:ふるさと回帰支援センター資料を基に筆者作成)

「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」(内閣官房)でも「働き口が見つからない」(41.6%)という雇用に対する不安が、「日常生活の利便性」(36.7%)、「公共交通の利便性」(35.9%)を抑えて最も高いものでした。それに伴って、「給与が下がる可能性」(24.8%)や賃金の不安定化といったものが移住や転職に関わるものとして移住希望者には心配されています。

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若い世代からも注目を集めている「移住交流フェア」

一方で、国土交通省の「国民意識調査」(2018年)でも三大都市圏に住む各世代のうち特に20代の4人に1人が「地方移住に関心がある」ことが分かっています。地方移住の受け入れ側となりうる5万人未満の市町村の60代から70代の高齢者層や20代、そして地方移住をする側となりうる三大都市圏の20代を中心として、田舎暮らしなど地方移住の推進について、関心が高いことが推察されるといいます。

移住者への期待高まる地方都市では諸施策の整備急務

大都市圏から地方都市へ移住する際に仕事や勤務先を考えると、大企業が少ないことから中小企業などに就業する例が多くなります。移住に伴う転職の場合、どうしても就職先が限定されてしまいます。しかし、これまでは製造業の工場などが多かった地方都市も近年は、コールセンターなど労働集約型産業において拠点を構えるケースが増えているほか、IT企業の移転なども盛んに行われており、選択肢が少しずつ広がりを見せてもいます。

地方都市においては人口減少に伴う産業の担い手不足も深刻です。特に一次産業や伝統産業などが主要産業である場合、担い手不足による産業の衰退が問題となっていますが、大都市圏から地方へと移住した若い世代が新しい担い手となり、地域住民たちと協力して地域を活性化させる動きが起これば、地方での新しい暮らしの豊かさを編み出し、都市部とは異なる独自の魅力を創出します。新しいことが生まれる地域に人は惹かれ、活気も戻ってくるのではないでしょうか。

さらに、若い世代の移住者の場合、単身者だけではなく、家族で移住する例も多くありますが、子育てに優しいと思えるような環境でなければ、移住する決断には至らないでしょうし、まちの未来もありません。出産や子育て世代の減少は都市の衰退の可能性がありますので、安心して暮らすことができません。移住支援においても行政による子育て支援の整備が移住者にとっても魅力となり、大きな判断材料になることでしょう。

以前は人口も少なく、流出人口が多かったような地域、課題だらけだった地域に都市部からの若い移住者が少しずつ増えていき、地域が直面する課題に真摯に向き合って発想を転換させ、持続可能な先進地域に変化していく例も各地で見られるようになってきています。チャレンジ精神がある若い移住者たちは廃校や空き店舗、空きビルに拠点を構えたり、農業やITで起業するなど、地方都市では新たな産業や雇用を創出する移住者への期待も高まっています。(次回は、4月12日に国の政策や自治体の施策などについて掲載予定です)

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