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首都圏のプロ人材が地方企業の活性化を担うリサーチ・フェロー(客員研究員)に!「信州100年企業創出プログラム」(前編)
国立大学法人信州大学
GLOCAL MISSION Times 編集部
2019/05/25 (土) - 08:00

大学がハブになった新しいマッチング

―大学が企業と人材(リサーチ・フェロー)をつなげるハブになるというケースは珍しいと思いますが、大学がその役割を担う際の強みは何なのでしょうか?

地方と首都圏の人材マッチング・環流事業は、従来、民間企業や地域お越し協力隊の制度など国・自治体等が担ってきました。この取組によってある程度、地方への人の流れが生まれたと思いますが、次の形が求められていたのだと思います。そこで新しい主体として大学が関わるとしたら何ができるのかを考えて、スタートしたのが、産学が連携した研究・学びによる「課題解決」や「人材のアップグレード・アップデート」(今流に言えば、「リカレント教育・学習」)です。

―マッチングの仕方も通常の人材紹介などと比べると企業や人材の選定方法や期間などスタイルがずいぶん異なっているようですね

通常の地方創生事業が、首都圏にいる人材と地元の企業をストレートにマッチングさせる仕組みだとすると、我々の場合は変化球によるマッチングと言えるかもしれません。従来の仕組みに対して人材育成というもう一つの軸を持たせるともいえるでしょうか。
変化球やもう一つの軸の要素の一つが、「マッチングまでの段階・期間」です。まず、人材育成や学び直しという要素が入るので必然的に時間が必要になってきます。また、マッチングは結婚のような重大なイベントです。そこで、6ヵ月間かけてお互いに見定めましょうという、「お見合い型」のマッチングといたしました。仕事ベースで表現するならば、大人の「インターンシップ」と言えますかね。学生はインターンシップをやって、いろんな企業との適性を見たりしますけれども、大人だってそれをやってもいいのではないか、と考えたわけです。

―確かに企業側と人材側、お互いにとって、長い目で見たときに会社の文化に馴染めるかどうかを見定めることは大事ですね

そう、接着の時間が重要なんです。だから6ヶ月間という時間にも意味があります。1年じゃダメですし、3ヶ月でもおそらくダメでしょう。リサーチ・フェローや企業の皆さんにも聞いてみたんですけれど、1年だと長すぎて応募する際に足踏みをしちゃうんですよね。でも逆に3ヶ月だと短すぎちゃって、何ができるか分からないと。6ヶ月ならその中間。何かをやるにしては短いかもしれないけれども、全く何もできないわけじゃなく、始めることはできる。私は専門が心理学なんですけれども、人と人の心をどう動かすかということを常に意識してプログラムを組んでいます。

―6ヶ月という期間には、そういう意味があったのですね

あとは、「10月から3月」という期間設定も重要です。年度が切り替わる。これが9月で終わりだと中途半端なんです。だから10月から始まって、3月で一旦終わるということにしました。リサーチ・フェローにとっても企業側にとっても、一つの区切りが付けられる。そういう絶妙な余裕や締切などリスクマネジメントの仕組みを設定することが企業やリサーチ・フェローが参画する際にも重要だったと思います。

―地元の皆さんの反応はどうでしたか?

このプロジェクトがすべての企業に向いているとは思っていなかったので、最初は地元の行政や商工会議所などいろいろなところに、我々のコンセプトに合致する企業さんを紹介してほしいとお願いしました。そこで64社の紹介を受けて、我々でも吟味をして、38社に提案。そのなかの14社が「面白そうだね」と関心を持ってくださって、マッチングをする中で、最終的に8社が参画を決定しました。

―企業はどのような基準で絞り込んでいかれたのですか?

企業選定のところではコンソーシアムメンバーの日本人材機構が中心に動いてくれていますが、まず社長がGOを出すかどうかですね。やっぱりトップが判断しなくてはならないし、トップと話をしながらやれないところは結局上手くいかないんです。そのために何度も通って、話をして、「やる」という決断をしていただいています。そこが最初の大きなポイント。トップの方と直接対峙できるというのは、スピード感にも影響してきますから。そういう意味では、社長との距離が近い規模の会社、社員から目に見えるところに社長がいる会社の方が向いているような気がします。

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コンサルタントではなく、「研究員(リサーチ・フェロー)」

―課題解決プランニングですが、これは企業の現場で取り組むのですか

はい。リサーチ・フェローは、基本、週4日間ベースで、企業の現場に入り込んでもらいます。よくある企業コンサルタントの「見に来る」という形ではなく、ちゃんとメンバーの一員になっていただくのが前提です。日々の中できちんと自分で課題を見つけていただいて、分析・対応をしていただきます。ところがずっと現場にいると、自分も一緒になっちゃうんです。そこで、意識して週1〜2回は大学に来てもらって、1週間取り組んだことや、自分の考えや取り組みを他のリサーチ・フェローや教員に聞いてもらい、「本当にそれで良いか?」というのをゼミで確認して、再び現場に戻る作業です。プランニングと表現していますが、ただ絵に描いた餅の計画を作成するのではなく、実践と客観性を持たせるところが特徴です。

―研究報告の資料を拝見したのですが、リサーチ・フェローの方がすごく積極的に現場に入り込んでいる印象を受けました。これも大学での学びによるものなのですか?

さきほど、お話したとおり、コンサルタントを募集したのではなく、「研究員(リサーチ・フェロー)になってください」という募集したことによると思います。また、就職しに来てくださいという言い方をしているのではなく、企業の抱えている課題を解決しに来てください、といったことも重要です。結果的には同じことが起きるとしても、表現次第では、人の捉え方って全然変わるんですね。

―確かに、「研究員(リサーチ・フェロー)」と言われると、ものすごく自分事として捉えてみたり、積極的に動いていこうという気持ちになります

そうですね。だから「研究員(リサーチ・フェロー)になりませんか?」というのは大事なキーワード。これは日本人材機構さんと話をする中で、大学と組むときにそういうのができないかなという提案から生まれました。今回参加した人達は、「研究」ということに対しての感度がある人。「そういうのは興味がないよ」という人ではなく、むしろ研究をしてみたいと思っている人、アカデミックな思考がある人たちが、この言葉に反応してくれる。たぶんそれが募集においても他のマッチングとは異なる強みになっているんだと思います。

―なるほど。属性を意識したアプローチというわけですね

首相が開催する第二回の中途採用・経験者採用協議会(https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=6146)があって、そこである企業さんがおっしゃっていたんですが、「日本はセカンドキャリアにあまりいいイメージがない。でもこれ、海外へ行くと逆で、いろんなことを経験していることが強みと捉えられる」と。これはいいかえると日本では転職の時の“積極的な理由”や”付加価値のある理由”があると行動を促しやすいことだと思います。つまり、私はリサーチ・フェローになるために今の仕事を辞めてこっちに入ったんだというと、ちょっと箔が上がる形でジョブチェンジができる。人の心理や顧客ニーズに対応することで、それまでできないと思っていたこともうまく機能する好循環が生み出せることをプログラムとしても挑戦をしているんです。

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信州大学学術研究院 総合人間科学系 准教授(博士:学術、専門社会調査士)

林 靖人(はやし やすと)さん

1978年生まれ、愛知県出身。信州大学大学院総合工学系研究科修了(博士:学術)。専門は感性情報学。修士課程在学中から大学発ベンチャーの立ち上げに参画し、社会調査や行政計画等の策定に従事。現在、信州大学産学官連携・地域総合戦略推進本部長、キャリア教育・サポートセンター副センター長として研究・教育に関わりながら、地域貢献活動として地域の地方創生総合戦略等の策定や地域活性化活動に多数関わる。

企業側のニーズとリサーチ・フェローの志向や経験値を見極めマッチング

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