main.jpg
復興のその先を見つめて。地域ニーズに応える新しい医療介護の仕組みをつくる(後編)
ロッツ株式会社
GLOCAL MISSION Times編集部 GLOCAL MISSION Times 編集部
2018/05/14 (月) - 08:00

地域の健康をサポートする「ジム併用型リハビリ施設」

―前例のない取り組みとして、フィットネスジム併用のリハビリ施設を開設されていますが?

既存のものだけではカバーできないことが、どんな分野にもあります。取り組むからには新しいものを作り出さなければ意味がありません。事実、医療介護に関してはメスを入れる必要があるんです。お店で商品を販売する、サービスを提供する場合、お客様からお金を頂戴するわけですから、必然的にお客様中心になります。ところが医療介護の現場では、お金を支払ってくれるのは患者さんではなく国です。やってもやらなくても金額が同じという環境では、サービスの向上は望めませんし、施設を運営する側の意識も改善されないでしょう。医療介護に関して日本は、技術も知識も見識も大変優れているといわれています。けれど、それが生かされていません。

先進医療の導入で治療も進化していますが、それらはすべて罹ってしまった病気に対してのもので、ならないためにどうしたらいいかという予防分野の取り組みは遅れています。そこで考えたのが通所型リハビリ施設の活用です。保険収入の対象となるリハビリ施設を、夜はフィットネスジムとして開放するという方法です。リハビリで通う方からは保険で、フィットネスジムの利用者からは会費をいただく。ビジネスの仕組みを構築してサービスを提供できれば、十分に利益を見込めると考えています。すでに運用も始まっていて、フィットネスジムには100名ほど会員が集まっています。専属の医学療法士が医学的根拠に基づいたパーソナルトレーニングを行えるのが強みです。一般のトレーニングジムで理学療法士を雇用するとなると、人件費が高くなってしまいますが、うちはデイサービスと一体化することで、会員様への負担を最小限に抑えそれを可能にしています。

0122.jpg
日中は、通所型リハビリ施設として活用
0119.jpg
夜は、のべ100名の会員が通うフィットネスジムとして開放

スタッフの創意工夫と努力で、地域の温浴施設を再生

―さらに玉乃湯の運営へと事業が発展していますね。

訪問リハビリは在宅なので使える機材が限られます。本来リハビリの目的は機能を回復させるだけではなく、自立して生活できることが目指すところです。自分で生活するためには外にも出て買い物もしなければなりません。自宅での訓練に加えて機材を使ったトレーニングをとりいれる必要があります。そう考えたときに、商店街が整備されることになりお声掛けいただいて施設を作ったという流れです。

04.jpg

玉乃湯に関しては採算性も含めて、非常に厳しいという見解でした。観光客の減少や人口の流失などの現実を見ると、運営するのは無理だろうと思いました。こちらは市の公共施設なので老若男女問わずサービスを提供しなければならないなど条件が多く、私個人としてはやらないつもりでした。そのことを責任者に話したら、「医療従事者もいるわけだし、市民のみなさんがより健康になれる施設にしたらいいのでは?健康に配慮した食事を提供して、お風呂に入れたら最高ですよ」と説得されました。考えてみると我々がボランティアで来たときも、ずっとお風呂に入れなくて、玉乃湯が無料でお風呂を提供してくれていたのでホッとしたんです。それがなくなってしまうのは、復興に向かっている町の灯を消してしまうような気がして、採算が合わないのは覚悟のうえで、敢えてババ抜きのジョーカーを引きにいきました。

0102.jpg

現実は想像以上に厳しくて、運営するだけで毎月150万円が減っていく状況で、半年後にはやめようと思っていました。その状況を変えたのはスタッフの頑張りです。全員で知恵を絞って努力して、9ヶ月後ぐらいには黒字化したんです。あのときは本当に嬉しかったですね。ただ完全に黒字化できるほど安定した経営基盤ではないのですが、以前に比べると少しは夢を見ることができそうな環境にはなってきましたね。

―スタッフのみなさんが知恵をしぼったというのは、具体的に何をされたのですか?

何か必殺技があったということではなく、日々の積み重ねです。一番に言われるのは接客が良いということですね。当たり前のことですが、お客様にとって何が大切かを考えて、現場に立ってくれていることが一番の強みだと思います。ホームページやSNSを使った情報発信を始めたことも大きいのではないでしょうか。今は当たり前のことですが、それすらも以前はやっていなかったわけですから。あとは料理をおいしくして、忘新年会などの宴会を行えるようにして、ヨガ教室や足つぼマッサージなどのサービスを付加価値として提供していきました。お湯が金山から湧き出ている鉱泉なので、効能と成分表示をするなど、地道な努力を積み重ねていきました。

おもしろいところでは、暖房の灯油を抑えるためにチップを使った薪ストーブで温もりを演出したり、近所にいた野良猫を飼いならして「玉」という名前の看板ネコにしたり、金山ツアーも企画しました。考えつくかぎりのことをやりました。会社全体としては今年から少しずつ実りが出ることを期待しているのですが、現時点ではまだまだ胃に穴が空きそうな状況です。顔では笑ってますけどね。

001.jpg
(左上)健康に配慮し味付けにこだわったお料理は年配の方々にも好評 (右上・左下)玉乃湯 施設内 (右下)笑顔を絶やさないスタッフたち

地域のため、未来のために、継続し結果を出す

―これからの成し遂げたいこと、人生のビジョンとして目指すものはなんですか?

会社のビジョンとしては生き残っていかなければなりません。雇用を生み出すためにも拡大していかなければと考えているので、そのためにも陸前高田や大船渡という場所で、しっかり結果を出すことが最優先です。この地域で結果を出すことができれば、他の地域でも結果を出せるはずなので。私個人としては最初に支援すると決めた段階で、関わった地域で困っている状況がなくなるまでは、なんらかの形で携わっていくと決めています。これまでに海外でも生活して、さまざまな社会状況を見てきましたが、自分の国でこれほどまで人々が困窮する事態がおこるとは想像すらしていなかったので、単なる災害では片付けられない。それほどの大打撃です。自分に特別な力があるとは思っていませんが、力がないから仕方がないと済ますことはできません。

0027.jpg

―最後に、東京と比べての地方での戦い方、地方ならではの魅力を教えていただけますか?

地方は豊かですよね。食べ物も土地も。コミュニテイが狭いということはありますが、それは自分次第です。東京や大阪と比べると別の国と思えるくらい環境もライフスタイルも異なります。街の規模が小さいので、30代ぐらいになると自分で事業を始める人もいて、街の将来について考えるようになり、直接関わる度合いも大きいので、街の行く末を担っているという意識も育ちます。それはとても大事な観点だと思います。自分は何のためにここで仕事をしているのか、目的を明確にした上で自分の現在地を分かっていないと、いろんな情報に流されてしまうので。

もちろん地方だけではなく、都会の情報をキャッチすることも大切です。大都市ならではの生産性の高さや競争の激しさなど、両方知ったうえで都会と田舎を自在に行き来する。そういうスタンスがあるといいですよね。どちらにも良さがあると認めること。地方だからと敬遠するのではなく、実際に現地で見て感じることは大きな財産になります。逆もまたしかりで、都会にただ刺激を求めるのではなく、競争や挑戦の場として経験できることはたくさんあると思います。都会といっても数えると10都市程度です。そう考えると日本は狭い。遠いところはありませんね。

profile_takemotoshi.jpg

ロッツ株式会社 代表取締役社長

富山 泰庸さん

1993年ボストン大学卒業後、英国オックスフォード大学大学院、米国ペンシルバニア大学大学院で修士課程を修了。 国際関係学を学び、日本の社会保障問題と世界の貧困問題について分析。1998年帰国後、貿易コンサルティング会社を設立。 2000年に吉本クリエイティブエージェンシーの門戸をたたき、お笑いタレントとしてクイズ番組等に出演。日本の将来を良くするための勉強会を主催し、医療介護業界に対して情報発信を続ける。 2011年東日本大震災発生後、被災地支援活動を開始。プロジェクトを事業化し、「ロッツ株式会社」を設立。代表取締役社長に就任。

ロッツ株式会社

被災地から地方の新モデルを生み出す。我々が社会保障費を抑えることに貢献でき、尚且つ未来の子供たちが夢を持てる、そんな社会を作る。このことを会社理念に掲げ、岩手県陸前高田市から、岩手県大船渡市から、あの被災地域から日本だけでなく世界に貢献できるそんな企業になっていけたら、そんな願いで皆で目の前の仕事に全力で取り組んでいます。

住所
岩手県大船渡市猪川町字前田9-28
設立
平成23年8月4日
従業員数
21名(うち正社員18名)
資本金
4,000,000円
企業HP
http://lots.co.jp/

GLOCAL MISSION Times編集部

Glocal Mission Jobsこの記事に関連する地方求人

同じカテゴリーの記事

同じエリアの記事

気になるエリアの記事を検索