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「東北」と「職人」。最先端のITと情熱のものづくりでめざす、2つの復興(前編)
株式会社ワイヤードビーンズ
GLOCAL MISSION Times 編集部
2018/06/20 (水) - 08:00

東北最大の都市「仙台」の駅前。全国大手の支店がひしめく一等地に、この春、1000㎡もの新たな本社を構えた地場企業がある。その名は「ワイヤードビーンズ」。地元金融機関から「東北の星」とも期待されるその会社は、2つの顔を持つ。国内外のそうそうたる有名ブランドが行列を作るIT企業。そして、全国の伝統工芸職人とタッグを組み、高品質でモダンな商品を生み出し続けるヒットメーカー。「東北の復興と、職人の復興を支えたい」―そう語る三輪社長に、会社の歩みとこれからを伺った。

若いエンジニアがワクワクできる会社を、東北に

―まず初めに、三輪社長ご自身のキャリアと、起業に至った背景についてお聞かせください。

私は20代まで、東京にある大手商社系ソフトウェア企業に勤め、海外を飛び回っていました。でも30歳のときに仙台にUターンし、中堅IT企業の東北支店を任せてもらうことになりました。支店の経営ができれば、地域の活性化に貢献できるんじゃないかと思っていました。ところが実際は、自分が支店を大きくし、成功すればするほど、本社でも同時に部署を持つようになり、いつの間にか東京の仕事の方が大きくなってしまい。しかも結局、決定権は東京の本社にあるから、支店じゃ自分の思い通りにならない。税金もこっちの地域に落とせてない。それじゃあ地域の活性化も進まないじゃないか、ということに気がついたことが、創業のきっかけになりました。

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代表取締役 三輪 寛さん

―そもそものテーマは、地域の活性化だったということですね。

ええ、東北に欲しいのは、大きい小さいじゃなく、光る会社です。若いエンジニアがワクワクするような会社がこの地域にあることがとても重要だと、創業する何年も前から思っていました。その思いに賛同してくれている人たちが創業メンバーとなって、会社を設立しました。

―ITとものづくり、2つの柱で事業を展開されていますが、それぞれの事業内容について教えてください。まずはIT事業について。

ITチームでは、いろいろなグローバルブランドのECや、ネットショップ戦略のお手伝いをしています。例えば、1つのアパレルや化粧品の会社だけで十数種類のブランドを持っていらっしゃいます。基本的にはそれぞれのブランドにサイトを作っていく必要がありますが、十数種類のサイトを作って、管理するのって、ものすごく大変です。だからブランド側はこれまで、いろいろな地域、国の IT会社にバラバラに頼んでいたのですが、これからアジア各国にも展開していくとなれば、そのやり方ではきりがない。だからそこを集中的に展開できるIT会社を、グローバルブランドはすごく探しています。それがワイヤードビーンズであり、対応するための仕組みがコマースクラウドになります。

―とても明確な競合優位性、強みをお持ちですが、業界でのポジションはいかがですか?

「セールスフォース」のコマースクラウドサービスでは私たちが国内ローンチ数で1位、アジアでも3位といわれています。もともと私たちは、セールスフォースの前身である「デマンドウェア」のパートナーでした。デマンドウェアは、コマース単体で10億とか100億といったハイブランドのBtoCで世界一のシェアを持つプラットフォーム会社でした。その会社がアジアをターゲットとして、15年1月に日本に上陸しときに、すぐに提携しました。その後セールスフォースに買収されて、さらに加速している感じです。

ITとものづくり、両方やることで生まれる相乗効果

―三輪様ご自身もIT分野でキャリアを積まれ、IT事業で歴としたポジションを築かれている中で、なぜ“ものづくり”という新たな柱を立てられたのですか?

2000年の前半に、ライブドアや村上ファンドを中心としたマネーゲーム合戦が、IT企業の間でものすごく行われていました。実は私もそれに巻き込まれていました。IT企業の取締役になったのに、私の感覚では、お客さんのほうを全然向いていなかった。ITってもっと社会に対して正しく使われるべきなのに、単なるお金の道具にされているとすごく実感していました。アプリを1個作ってどーんとヒットさせて億の金を稼ぐとか、そういうことではなくて、社会的に正しくITを使いたいという強い思いがありました。じゃあ自分たちは何をやるのか?と検討し、たどり着いたのが、「職人のインフラを作る」ということでした。

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ドイツ・reddot design 2014、US・IDEA Bronze2014、グッドデザイン賞など、毎年数々の賞を受賞

―「職人のインフラ」とは具体的にどういったことですか?

今の世の中の流通網は、大量生産、大量流通のためにあります。月に100個しか作れない手作りのものを運ぶ流通網にはなっていません。戦後日本の、商品が地域になかった時代に起こってきたものだから、鉄道網の歴史とほぼイコールになっています。しかしこれからの最大の流通網は何かというと、鉄道ではなく、あきらかに ITです。そこで私たちはITを使って、職人のための流通網を作ろうと考えました。しかしそのためにはまず、「職人のものが売れるのか?」という疑問に答えないといけません。そこで自らメーカーとなって商品を作り、手作りのものがネットで受け入れられるという証明をしてきたのがこの9年間でした。結果、十分に売れるし、ものすごく大きなマーケットも存在しているということを証明できていると思います。

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大事なのは持続性。本物は、売れ続ける

―自社メーカーを展開されていらっしゃいますが、その特徴についてお聞かせください。

普通はメーカーが勝手にデザインして、こういうの作れますか?いくらですか?みたいなところから始まりますが、私たちは職人さんのところに行って、何の技術がその地域のものであって、その技術を使えば、どういったデザインができるのかを学んで、そこからデザインを起こして、私たちのデザインが本当に実現可能なのかどうなのかを検討していきます。ある程度値段も抑えながら、それでいてマーケットから見るととても新鮮な技術やデザインを模索して、やっと一つの商品になります。そこがこれまでのメーカーとは違うところだと考えています。

こういったプロセスや想いは、「ワイヤードビーンズ」という社名にも由来しています。「Wired」は「繋げる」という意味、「Beans」は地域に眠っている豆、つまり卵ですよね。技であったり、職人さんであったり。そういった地域の豆を繋げて、ものにしていこうという思いを込めています。

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―職人さんと二人三脚のプロセスを大切に、ものづくりの本質と丁寧に向き合っていらっしゃるんですね。具体的にはどんな商品を作っているんですか?

例えばこのマグカップは1個5000円しますけれども、手作りやデザインも大事ですが機能性を持たせています。1個5000円って冷静に考えると少し高いですよね。その価格に対して恥じない作り、というのが私たちの商品の特徴だと思います。たとえばマグカップの場合だと全商品とも、底がカップの内側に向かってぽこっと出ていますが、この突起に意味があります。コーヒーのクレマーがどんどん上に上がってくるように設計されていて、これだけで全然味が違うんですよ。
また、こちらのワイングラスは、“食卓で若いワインをいちばんおいしく飲めるワイングラス”という発想で生まれました。全部に返しがついているのが特徴で、飲む時に自分の唇が期待している速度よりも遅く入ってきます。ワインが入ってくる前にほんの僅かに空気が薄く入ることで、口のなかで柔らかくなるんです。比べれば素人でもわかるぐらい全然美味しさが違います。

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―「生涯補償」という珍しい制度も設けていらっしゃいますね。これにはどういった想いが込められているのですか?

使い続ける仕組みを作りたかったからです。職人の復興というのは、飾り物ではなく普段使いのものを作らないと実現しないと考えています。飾り物は、1回買ったら終わり。そうじゃなくて、普段の生活の中で使い続けられるものを作ってこそ、職人の復興につながっていくと思っていて。そのためには昔からの職人の文化である、“修理すること”も必要だと考えました。グラスとマグカップは修理ができませんので、修理ではなく無償で交換することを実現しました。製品に込められた思いをわかっていただいて、使い続けていただきたいのです。自分たちが儲かるかどうかではなく、職人を支えていくということがこのブランドを作った本当の原点です。

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ビルオーナーの想いも詰まった、仙台では大きな1000平米オフィス

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