ZOZOグループと地方企業の新たな可能性を、宮崎で切り拓く(後編)
株式会社アラタナ 代表取締役社長 濵渦 伸次さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2019/02/13 (水) - 08:00

今や世界中の企業が熱視線を注ぐ、EC(電子商取引)。そのシステム構築で日本有数の実力を持つ企業が宮崎にあることをご存じだろうか。濵渦伸次代表率いる株式会社アラタナがこれまでに手がけたECサイトは800件以上。その技術力が認められ、2015年からはファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOグループへの参画も果たした。地方企業の新たな理想形を模索し続けている同社の思いを、濵渦代表にうかがった。

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ZOZOグループと地方企業の新たな可能性を、宮崎で切り拓く(前編)

目線を上げれば、地方と東京の地域差はたいしたことがない

―宮崎は都心からのアクセスもすごく良いですよね

そうですね。東京から宮崎への日帰り出張だと、バッグも持たないで、携帯と財布だけ持って飛行機に乗ったりするんです。1?2時間ぐらいで行けますから。東京から幕張に行くのとあまり変わらないんですよ。前澤もよく日帰りで出張に行っているので、そのスケール感で一緒に働いていると、宮崎と東京の地域差って本当にたいしたことないなぁと感じる。地方にはものすごくチャンスが溢れていると思っています。

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―“地方転職”については、どのようにとらえていらっしゃいますか?

どちらかというと「地方対東京」という目線がすごくあると思うのですが、もっと目線を上げるべきだなと。宮崎で会社を経営している人からすると、東京に行くのはすごくハードルが高いと感じているし、東京の人も地方で暮らすのはハードルが高いと思っているでしょう?でもZOZOグループに入って、前澤をはじめ色々な経営者の方と話しているなかで目線が上がってくると、そんなことどうでもよくなってくるんです。明日「インドへ行け」といわれれば行きますしね。
逆にうちでは、宮崎出身の社員が東京に転勤になることもあるんです。最初はみんな嫌がるんですけれど、来てみたら東京も楽しいし、宮崎ももっと大好きになるし、いいことばかり。人って、働く場所、住む場所が変わると価値観も変わるし、成長もできるんです。東京一極集中をなくすということより、住む場所を変えるというハードルを下げることのほうが大事かなと思っています。

―移住のハードルを下げるためには、何が必要だと考えますか?

例えば東京出身の人からすれば、地方って怖いですよね。でも東京以外に魅力的な会社や、子育てに良い環境があったら行きますよね。そのハードルがどんどん下がればと思っているんです。そういった意味では、東京と同じ水準にしたいという思いはあります。給料も同じで、楽しい仕事もできる、となったら宮崎に引っ越しやすくなりますし。そういう構造を実現できなければ、本当の意味での地域活性にはならないと思っています。

社員、会社、取引先の「ハッピートライアングル」を地方に

―企業理念として掲げていらっしゃる「ハッピートライアングル」には、どのような思いが込められているのでしょう?

本当の成長って、三方良しじゃないですか。会社が儲かって、メンバーの給料も高くて、クライアントも満足していて、売り上げが上がって…という。これがどこか欠けがちなんですよね、地方で会社をやっていると。全部できている会社って本当に少ないと思っていて、唯一できているのはZOZOだと思っているんです。経営者も楽しそうだし、会社も儲かっているし、働く人たちも本当に楽しそうなんです。ZOZOTOWNはアパレルでは圧倒的ナンバー1のサイトになって、まさに“ハッピートライアングル”を体現できている会社だなぁと思っていて。だから僕にとっては、ZOZOがロールモデルなんです。幕張のマリンスタジアムや、地域の花火大会などにも協賛しながら、一緒にまちづくりをやっている会社なんですよね。アラタナのビジネスは東京をメインに展開していますが、おそらくこの先も、東京に本社を置くことはないと思うんです。こういう会社がもっと地方にできていけば面白いですよね。

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―地方でビジネスを展開する上での戦い方や、勝ち抜くための秘訣についても教えてください

東京だとなかなか差別化って難しいじゃないですか。“ランチェスター戦略”といっているんですけれども、局地戦でナンバー1になるというところは、地方ならではの戦い方だと思っているんです。また、宮崎に帰りたいと思っている人は一定数いるので、その職場選びの一番最初の選択肢になるための戦略は持っていなければいけません。僕らの資本は、人なので。そこについては、宮崎でテレビCMを流すなど意識してやってきました。

―実際にアラタナさんの場合は、自社のHP経由で応募してこられる方が非常に多いようで

今でも多いですね。社員の比率としては、宮崎出身のUターンの方が3割ぐらい。本当の地元の方が3割ぐらい。全く関係ないIターンの方が3割ぐらいですね。ちょうど3分の1ずつぐらいいる感じです。

―Iターンの方はどういった理由で来られるんですか?

例えば、本人はYahoo! JAPANに勤めていたんですが、奥さんが宮崎出身で、子育てのことを考えたらやっぱり宮崎しかない、とか。あとは新卒採用で、地方のベンチャーで頑張って働いてみたいという想いから応募してくれる若い方もいます。単純に僕らがやっているビジネスをやりたいと思ってきてくれる方が、Iターンでは多いです。ZOZOグループのなかで唯一、BtoB向けのサービスをやっている会社なので、そういったところで魅力を感じて来てくれる方もいらっしゃいますね。それからHPなどで自分たちの働き方を発信するようになってから、ライフスタイルに憧れて応募されるケースも増えていますね。

―現在の社員は何名ぐらいいらっしゃるんですか?

約120名です。子会社になった3年前とほとんど変わっていません。ですが、労働集約型からシフトしていったというのもあり、売り上げはかなり大きくなっています。環境が変わっていくなかで、人数を増やすよりもビジネスモデルを変えていくことに集中してやってきた3年間だったと思います。ただこれからは、規模を拡大して人数も増やしていく予定です。

ビジネスのツールはスマホだけ。シンプルさが、付加価値を生む

―宮崎で仕事をしていくうえで苦労することは?

特にないですね。今はテレビ会議システムも浸透していますし。ZOZOグループも千葉、海外と拠点があるのですが、テレビ会議システムを使えば対面での会議と同じ感じでスムーズに進行できるので、全く支障はありません。テクノロジーが距離のネックを解決をしてくれるようになりましたね。
最近はパソコンを使って仕事をすることもなくなりました。今はスマホだけ。本当にこれだけ持って移動しています。資料など全部これで作っていますから。

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―不必要なものがどんどんそぎ落とされている感じですね

この3年間で事業もいろいろと削ってきました。なるべくシンプルにするよう心がけているんです。付加価値を生むためには、シンプルなビジネスモデルじゃないといけないと思っているので。地方だからこそ、いろんなことをやりすぎないよう気をつけています。地方はコストが安いので、いろんなことをやれちゃうんですよね。でも1つの事業だけに集中していかないと、付加価値も生みだしにくい。なるべく労働集約にならないよう、1つの事業に集中して、その結果、付加価値を生みだしていけば、働き方も柔軟になり、優秀な人材が採用できて…という良い循環が生まれてくるし、地方の良さも出るのかなと思っています。

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―最後に、今後のビジョンをお聞かせください

ZOZOグループが持っているビッグデータや資産をもっと有効活用できる動きをしていきたいと思っています。うまく自分たちのECや、自分たちが手がけるブランドさんの自社ECに活かしていければいいなと。逆に僕らの資産もZOZOグループのために活かしていきたいと思っています。グループの中で唯一B向けサービスをやっている会社ですから、ZOZOの新しい可能性を、宮崎のアラタナが開拓していきたいなと思っています。

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株式会社アラタナ 代表取締役社長

濵渦 伸次(はまうず しんじ)さん

1983年、宮崎県生まれ。都城工業高等専門学校を卒業後、東京の大手メーカーに就職するも、3か月で宮崎へUターン。と同時に起業を決意し、デザイン事務所とカフェを立ち上げたが、経営に失敗。しかしアルバイト生活のなかで始めたアパレル店のネットショップが成功。ECサイトにビジネスチャンスを見出し、2007年に専門学校時代の友人とともに「アラタナ」を設立した。

株式会社アラタナ

2007年、宮崎市に設立。資本金9900万円。従業員数約120名。ECサイトの構築・運営に特化したビジネスを展開中。ブランドイメージに沿ったデザイン制作から、サイトの立ち上げ、マーケティング、運営の効率化まで、ECサイトをワンストップでサポート。2015年には日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOグループの一員に。ZOZOグループのハードとソフトを活用した新たなサービス開発に力を注いでいる。

住所
宮崎県宮崎市橘通東4丁目8番1号 カリーノ宮崎7階(宮崎本社)
設立
2007年5月1日
従業員数
取締役・執行役員9名/監査役1名/社員数120名
資本金
99,000,000円
グループ紹介
東証1部上場 ZOZOグループ corp.zozo.com
会社HP
https://www.aratana.jp/

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