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地域事業における「稼ぐ」を間違えない、3つのポイント
木下 斉
2019/07/26 (金) - 08:00

近年様々な局面で、「稼ぐ」というテーマが地域政策にも用いられるようになっています。

私が地域活性化を事業的に捉え、“経営する”という視点で取り組みを始めた高校時代には、「まちづくりで金儲けについて語るな」という活動家の方々からお叱りをいただいたり、はたまた「まちづくりなんて儲かるものでもないのに、何を言ってる」とビジネスマンから苦言を呈されることもありました。当時は、非営利、営利双方から「地域活性化というものは行政の予算で儲からないけどやるもの」という意見を多くいただきました。
私が5年前に「稼ぐまちが地方を変える」( https://amzn.to/2xWydIj ) という本を出した背景には、政策面でも事業面でも、より「稼ぐ」ことの重要性を示すこと、そしてそのためには、一般的に言われる行政予算で推進される地域計画において“重要”だとされることとは異なる10の鉄則を世に出したいという想いがありました。

地域において、なぜ稼ぐことが大切なのか。それは、自分個人の儲けを増やすためではありません。まずは地域での取り組みを持続可能にするため。また、稼ぐことができれば予算などの時期・認可などの影響を受けずに民間資金で取り組みを始めることができるため。そして結果としてその稼ぎを再投資して、次なる事業を連鎖して行い、複利で地域での取り組みを“適切に拡大・進化”させられるためです。地域における平均所得向上につながることが地域活性化の重要な要素でもあるため、関わる人達の所得が拡大することも当然プラスになるのです。

現在は、多くの若い世代の方々を中心に、地方において新たな事業の立ち上げに挑戦することは一般的となり、地域が活力を持つためには「稼ぐ」ことと向き合うことが大切という認識は、政策、個別事業において広く認識されるようになってきました。

その一方で、稼ぐという言葉だけが独り歩きし、厳密には全く稼げていないのに単なるスローガンとして活用されるものであったり、はたまたそもそも稼ぐという意味が理解されていないものもあったりします。

今回は、本質に立ち返り、地域の「稼ぐ」という視点で大切なポイント3つを整理します。

売上ではなく、利益で黒字か

稼ぐという地域政策で間違っている一番の例は、売上の話をしているケースです。

「収入がある」というのを「稼ぐ」と訳してしまい、利益ベースになっていないことです。実際には、単に売上があるから“稼げている”わけではなく、利益がでなければ当然赤字となり、誰かがその赤字を埋め合わせなくてはならないため、継続困難です。とある県のアンテナショップの方が「稼いでいます」と仰るので話を伺ったら、数千万円あるといった売上よりも大きな億単位の家賃を支払っていることがわかり、それは稼げていないですね、という話をしたことがあります。

稼ぐということは、利益ベースで黒字になるのが原則であることを整理しなくてはなりません。

単年度ではなく、累積であるか

2つめは、事業の立ち上げと運営を含めて累積で黒字であるか、ということてす。
今年は稼げたけれど、来年は稼げない、ではなく、継続的に稼ぎ、累積で黒字となって資産が拡大していくことが、本来の意味での稼ぐということです。それによって次なる事業に向けて自己資金でも投資が容易になったり、与信が拡大して融資を引き出すことが可能になり、適切な成長計画を組み立てることができます。

「うちの事業は稼いでいます」という、とある新規開発事業について内容を拝見したところ、建設時に必要な資金を投資融資で集められたことを「稼げる」と表現されている方がいました。もちろん、立ち上げ期の資金が集まることは大切なのですが、その後の運営は大変困難になっており、つまりは全く稼げていなかったのです。

稼ぐというからには、常に累積で黒字になっているのか、ということと向き合う必要があります。

民間事業単独ではなく、官民連結であるか

最も多い勘違いは、国や自治体からの補助金、交付金を含めて稼ぐと言っているケースです。
行政負担が大きく行われている状態で、個別事業だけをみれば累積で黒字になっていても、行政負担が永続的に行われなくては、やはりいつ状況が変化するかわかりません。実際には赤字なのにも関わらず、様々な予算を投入することで黒字経営にみせている施設に、さらに巨額の予算をつぎ込んだものの、市長選挙で反対派が当選して一気に状況が変化する、なんていうことはよくある話です。

私は長く、まちを一つの会社と見立てて経営する、という話をしていますが、行政も民間も同じ会社の1部門に過ぎません。そういう意味では、行政から民間への資金移動をし、民間部門だけの決算をみて黒字だ、といっても虚しいわけです。行政支出も踏まえて累積で黒字化するのが、真の“稼ぐ”という意味になります。

そういった意味でいえば、医療・福祉・介護・教育といった分野とは異なり、地域活性化という分野においては、自治体と民間が取り組んで官民連結で累積黒字になる地方プロジェクトにのみ、本来であれば国の支援は行われるべきなのです。地方の状況を踏まえてしっかり利益を出せる事業を作り、そこに国の予算や優遇税制が行われるのであれば、事業の利回りがより拡大したり、さらには稼ぎによって資金を増やすことが可能になるからです。

稼ぐという意味をはき違えている限りは、結局地域に財は残り、再投資されません。各種政策や事業を上記の3つの視点で精査して「稼ぐ」という言葉が正しく使われるようになれば、より効果的なものになります。ぜひ今一度、稼ぐという言葉を使う際に見直しを行っていただければと思います。

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