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54歳で山口県柳井市へIターン。1年前は知らなかったまちが、人生の楽園に
株式会社アデリー 吉塚 秀樹さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2019/08/05 (月) - 08:00

柳井市は山口県の南東部に位置する、人口約3万2000人のまちだ。瀬戸内の良港だった柳井港は古くから海上交通の要衝。江戸時代には瀬戸内屈指の商都として栄えた。その面影が、名物の金魚ちょうちんが軒先に泳ぐ白壁の町並みに、今も残されている。そんな風情ある町並みから、歩いて数分のアパートで暮らしている吉塚秀樹さん(55歳)が今回の主人公。吉塚さんは54歳の時に、神奈川県川崎市から、縁もゆかりもなかったこの柳井市に移住してきた。その決断の理由は何だったのだろう?また初めて体験した地方ライフの感想も聞かせてもらった。

必要とされる場所で、もう一度輝くために

「あれ、クロダイですわ」

散歩中の吉塚さんが指をさす先には、悠々と泳ぐ数匹の黒い魚影が見えた。ここは、吉塚さんが暮らすアパートの目の前を流れる柳井川。JR柳井駅から500mほどしか離れていない。

「すぐ近くに瀬戸内海があるんです。だからこの柳井川には海水と淡水が交じり合っているんですよ。魚が釣れる場所がたくさんあるので、うれしいですわ」

釣りが趣味だという吉塚さんはそう言って笑顔をこぼす。だが吉塚さんが柳井に移住してきた理由はそれではなかった。
「仕事のやりがいにひかれてきてみたら、海も、山もあって、ラッキーという感じ。山登りも好きなんですよねぇ。でもほんま、たまたまなんです。こんなに暮らしやすいまちとは全く知りませんでした」

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今回お話を伺った、吉塚 秀樹さん

吉塚さんは大阪市出身。関西の大学を卒業後、大手機械メーカーに就職。横浜の拠点に配属になり、OA機器のソフト開発やシステム設計に携わっていた。31歳の時には、東京に本社がある印刷会社に転職。商品企画部長などとして手腕を発揮した後、パソコンとインターネットを使ってブライダル用の印刷物を制作・販売する子会社を立ち上げた。今でいうEC(電子商取引)サイトの走り、である。事業は軌道に乗り、会社は順調に成長した。ところがその後、スマホの爆発的な普及とともにPCのユーザーが減少し、市場も縮小。すると親会社は、その子会社をたたむことを決断した。
「そのときに、ここでの自分の仕事は終わった、と感じました。その会社がいやだったわけじゃないけれど、自分が貢献できる場所はもっと他にある。自分はまだまだできる―という気持ちがわいてきたんです」

54歳での転職活動が始まった。

大事なのは自分が貢献できるかどうか。場所は関係ない

いくつかの転職サイトに登録したところ、意外といっては失礼だが、すぐにかなりの数のオファーが届いたという。しかしその理由を聞くと、納得できた。吉塚さんはいわば、インターネットを活用したECのスペシャリスト。ECのノウハウは今、あらゆる業種の企業にとって注目の的なのだ。
しかも吉塚さんは、勤務地や業種にまったくこだわりをもっていなかった。

「住む場所に執着するのは好きじゃなかったんです。神奈川に住んでいる時も、関東に根をおろすつもりはなくて、家は買っていませんでした。もともと、変わることを不安に思うより、楽しく思うタイプ。だから働く場所、住む地域は、どこでもよかったんです。それよりも大事なのは、自分が貢献できる場所かどうか、でした」

希望通り、全国各地の地方企業からオファーが舞い込んできた中で、最も興味をひかれたのが、日本人材機構から紹介された、山口県柳井市に本社を置く「株式会社アデリー」だった。

同社は1977年にギフト専門店として会社を設立。現在はギフトの総合プロデュース企業として商品開発からカタログ制作、物流、販売までを一貫して手がけている。メインは百貨店やギフトショップへのBtoBだが、数年前からBtoCの事業化をめざし、ECサイトを開設。ところが思ったような成果が出ていなかった。

「初めて柳井市を訪れ、社長と面接をしました。女性の社長なんですけど、すごく情熱を感じたんです。困っていることを包み隠さず話してくれ、力を貸してほしいといわれました。ここだったら、自分のキャリアも活かせそうだし、会社に貢献することで私自身も幸せになれそうだと感じたんです」

そうなると気になるのはご家族の反応だ。しかし奥さんに自分の思いを告げると、すぐに理解をしてくれたという。
「妻も神奈川へのこだわりはなかったみたいです。長崎出身だし、私と同じタイプの人間なんですね」と笑う吉塚さん。子どもは2人いるが、1人はすでに社会人として自立。だが末娘は自宅から大学に通っているため、家族での移住は難しかった。そこで吉塚さんは、単身赴任で、柳井へ向かったのだった。

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サイトの再構築に挑戦。良好な人間関係を導いた姿勢

新天地で任されたポジションは、「WEB通販部次長」。入社後は、サイト構成の整理から仕事を始めた。

「ターゲットを洗い直してみると、サイトの構成との矛盾が多いことに気づいたんです。今はそこを組み立て直しているところ。あとは販促企画ですね。ネットも今は競合がたくさんいます。そういう中でいかにうちのサイトに集客し、注文してもらうか。そのための付加価値も作っていかなければなりません。まだまだ試行錯誤の途中です」

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自分に期待されているのは、EC事業の業績アップ。そのための戦略はすべて任されており、そのぶんプレッシャーは大きいという。

「自分の仕事は、自分で作り出していかないといけません。しかも、早く結果を出したい、という焦りは、めちゃくちゃありますね。それを期待されて入っているわけだから」

それでも、働き心地はよさそうだ。

「会社の人間関係はいいですよ。直属の部下は4人いて、みんな若いです。1人が30代で、あとは20代。自分の子どもみたいなもんですね(笑)。でも年齢のギャップも感じることなく、うまくコミュニケーションをとれています」

そんな良好な人間関係を築けた裏には、吉塚さんの気遣いもあった。
ECサイトについては、吉塚さんはスペシャリスト。今の会社では随一のキャリアを誇る。しかし吉塚さんにとっては初めての業界であり市場だ。ましてや会社のことはなにもわからない。だからまずは、たとえ相手が年下であっても、自分から頭を下げ、教えを乞うた。

「なにもわからないうちは発言しちゃいけないと思っていました。社内で疑問に感じることがあっても、簡単に否定してはいけない。そうなってきた理由が、それなりにあるはずだからです。みんなからすれば、この会社では自分たちのキャリアの方が上だ、というプライドもあります。その気持ちを理解しながらやってきたのが、よかったのかもしれませんね。でも、無理に溶けこもうとしたわけじゃありませんよ。無理はしちゃいけない。無理は続かないですよね。そこは、時間をかけることが大事だと思います」

住んでびっくり。柳井の意外な暮らしやすさ

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