「スポーツでいわきを東北一に」のビジョンは揺るぎなく(後編)

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「スポーツでいわきを東北一に」のビジョンは揺るぎなく(後編)
株式会社いわきスポーツクラブ 代表取締役 大倉智さん
鳥羽山 康一郎
2017/11/13 (月) - 08:00
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(株)いわきスポーツクラブ代表取締役・大倉智氏。「スポーツを通じて、いわき市を東北一の都市にする。」のビジョンのもと、さまざまな取り組みを行っています。そこには、サッカーのみならずさまざまなスポーツやジャンルをつなげ、いわき市のブランド価値を上げていくためのビジョンがありました。

〈前編〉人生の転換点を経て、思いを実現できる環境に身を置く(前編)

「いわきを東北一の都市に」を合い言葉に

我々が掲げているのは「いわきを東北一の都市にする」というフレーズです。何を以て東北一か、とよく訊かれますが、まずは心の豊かさだと思っています。自分の住んでいるところに誇りが持てるようにしたい。ある居酒屋でお年寄りのご夫婦に「いわきFCから元気をもらっている」と言われました。いい仕事をしたなと思う瞬間です。人々が活力を感じたり前向きな気持ちになったりという気持ちになったときが、「東北一」ではないでしょうか。親会社であるドームの安田社長は、人口で仙台を抜きたいとも言ってますが。(笑)ここの施設がそのきっかけになればいいとも思います。
でも、来たばかりの頃はアンチに思う人たちもたくさんいました。東京から何も知らない奴が来て、いろいろ言ってと。みんなで地道な活動をしたり講演を積極的に行ったり、少しずつ変えていきました。アンチの人々とも会って話をしました。施設が実際にできあがっていくにつれ気持ちは好転して、今は町を挙げて応援してくれるようになったんです。先の共同宣言も、そんなところからつながっています。

選手のロッカールーム
選手のロッカールームには「いわき市を東北一の都市にする」というフレーズが掲げられています

J1昇格は目標ではなく結果に過ぎない

いま、いわきFCは福島県リーグに所属しています。Jリーグへ上がっていくためにはいくつものステージがあります。マスコミからはJ1にはいつ行くんですかと訊かれますが、それが目標ではありません。我々が掲げているビジョンにもそのことは書いていない。J3でもJFLでもスタジアムにいつも2万から3万の人が集まって楽しんでもらい、また来たいと思う瞬間を感じてもらいたい。それが我々の存在意義です。もちろん勝たないと人は来てくれないという現実もありますが、大事なのはお客さんが見て面白いか面白くないか。サッカーに興味がない人でもパッと見て面白いかどうかはわかります。たとえ負けても面白い試合であればまた来てくれる。「負け方が大事」って私はよく言っているんですが、これはスペインで学んだことです。
よく、JリーグチームのフロントはJ1から落ちないことを第一に考えています。上がったり下がったりの結果でしかものを言わないけれど、スポーツってそういうもんじゃない。人を感動させるのがスポーツで、「それができるあなたたち選手は幸せだよ」といつも言っています。楽しんでもらっているうちにJ1になっていた、が理想です。

シューズハンガー
選手が使用中のシューズハンガー上部にも、スローガンが書かれています

サッカーを通じた「人材育成と教育」

我々のビジョンのひとつに、「人材育成と教育」があります。いわきFCパークでは子どもたちを育成するためのアカデミーが既に始まっていて、男女の選抜チームができています。2018年には高校生のチームが立ち上がり、2020年には中学から高校までの6学年が揃います。中高6年間で、フィジカルの他に栄養学や語学など、将来にわたってスポーツができる基礎をつくることをコンセプトにしています。
Jリーグでもアカデミーを提唱していますが、現状なかなか実現が難しい。トップ選手の年俸も確保しなければなりませんから。でもこのプロジェクトで、そうなってほしいなと思っています。
それから、女子のスポーツ環境も変えていきたい。中学から高校までは部活などでやりますが、女性らしさのない厳しい環境で、スポーツ嫌いになって離れてしまいます。アメリカの女性は多くの方々がスポーツに親しみを持ち、健康でありながら美しく、強くあります。日本でも生涯にわたってスポーツをしましょう、美しく強い意思を持った女性をつくりましょうと、ドームのウーマンズプロジェクト「The Athletic Woman」を下敷きにした育成計画を立てています。うちの女子チームはユニフォームではなく、可愛らしいスポーツウェアに身を包み、バンダナを巻いてプレーしています。そういう新しいものを発信できたらいいですね。子どもたちの健康を維持できるようないろんなスポーツ環境を、グラウンドを利用して無料で提供していきます。

アカデミーの女子用ロッカールーム
アカデミーの女子用ロッカールーム外には、「こうなってほしい」の願いが

「スポーツマーケティングによる地方創生」のモデルを目指す

選手によってチーム力を上げるのはそれほど難しくないと思っています。Jリーグに漏れても優秀な選手はたくさんいますから、そういった子たちが集まってくればそこそこのチームは必ずできます。同時に、「日本のフィジカルスタンダードを変える」という大きなビジョンも持っていて、見た瞬間「こいつにはかなわない」と思われる選手をつくらなければJリーグの発展はないと思っています。今までJリーグでできなかったことを、ドームのノウハウを導入することで可能になるでしょう。J2やJ3からオファーがある選手でも、このビジョンに食い付いて集まってくれるんです。
一方で、フロントの人材育成も重要な課題です。アメリカのようにスポーツが産業化され、儲かるビジネスとなれば優秀な人が入ってきます。でも、見合う給料が払えないのが現状。それを変えていかなければなりません。スポーツビジネス業界には人材が足りませんから。
Jリーグに限らずサッカーチームはほとんどが地方にありますから、地方転職は普通です。高校選手権でも、地元チームが出ると応援しますよね。いわき市民35万人が熱狂的に応援してくれれば、地方が元気になる。スポーツマーケティングは、地方にバッチリ合うんです。地方創生のひとつのモデルになると思っています。

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東京で優秀な人材がいたら、採りたい。条件は「何でもできる」こと。スポーツ興行はサービス業なので土日も関係ありませんが、チャレンジ精神があり、なんでも前向きに取り組むことが好きな人であればいいですね。
スポーツで地方をよくするという大局に立たないと、Jリーグも面白くなりません。我々のビジョンに賛同してくれる人が増えれば、いわきが東北一の都市になる日は近いと思います。

大倉氏ポートレート

株式会社いわきスポーツクラブ 代表取締役 兼 総監督

大倉 智さん

1969年神奈川県生まれ。1992年早稲田大学卒業後、日立製作所入社。社員選手から柏レイソルのプロ選手に転向。1996年ジュビロ磐田へ移籍。1998年に米国ジャクソンビル・サイクロンズへ移籍後現役引退。2000年よりヨハン・クライフ国際大学(バルセロナ)にてスポーツマーケティングを学ぶ。2004年から湘南ベルマーレ強化部長に就任しJ1昇格。2015年に湘南ベルマーレ代表取締役社長に就任。2016年よりいわきスポーツクラブ代表取締役。

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鳥羽山 康一郎

鳥羽山 康一郎

ライター/コピーライター/プランナー

文字を通じてのコミュニケーションを真ん中に置きながら、映像、画像などにも手を出しつつ活動。数多くのインタビューを通じ、その人の数だけの生き方に感動し感化される。自身もオフィスを持たない生き方を模索している。

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