人生の転換点を経て、思いを実現できる環境に身を置く(前編)
株式会社いわきスポーツクラブ 代表取締役 大倉智さん
鳥羽山 康一郎
2017/11/06 (月) - 08:00

Jリーグ初期からの選手で、現在いわきFCを運営する(株)いわきスポーツクラブ代表取締役の大倉智氏。「スポーツを通じて、いわき市を東北一の都市にする」というビジョンを掲げ、精力的な活動を行っています。サッカーを始め、プロとして活躍し、その後今に至るまでには、それぞれの節目に「SELF TURNポイント」がありました。それらを織り込みつつ、これからのビジョンも語っていただきました。

※「SELF-TURN(セルフ・ターン)」とは:
自分の生きがいという本質を探すこと。本来の自分に帰って(TURN)、自分を じっと見つめ、自分を生かせる場(PLACE)を見つけ出すことを意味します。

 

SELF TURNポイント①/プロとしてプレイする中、ある違和感を感じていた

小学校の頃からサッカー選手になるのが夢で、サッカーをやりたくて早稲田大学に入りました。でも大学3年くらいまでは商社マンかパイロットになりたいなんて思っていたんですが、4年生の時にユニバーシアード代表になり、ちょうどプロ化の波もやってきて、続けていこうと決めたんです。1992年に日立製作所に入社しました。プロとしても誘われたんですが、仕事がしたかったので普通の社員として入り、国際関係の部署に配属されました。その後、日立から柏レイソルになり、プロ契約に変わりました。
その頃から、プロ選手の評価基準や親会社との地位関係に疑問を持ちはじめていたんです。対等な立場ではなく、親会社の従業員という感覚で。評価基準も曖昧で、自分はどうやって査定されているのかもわからなかった。Jリーグができたばかりで、プロってどうあるべきかみんなが混沌としていたのかもしれませんが……。移籍に関してもいろいろあって、プロチームの経営とはなんだろう、ゆくゆくはプロ経営が引っぱっていかないとJリーグはつぶれるぞと思い始めたんです。

SELF TURNポイント②/現役引退後、スペインでスポーツマーケティングを学ぶ

Jリーグのあと、1998年にアメリカプロリーグのトライアルを受けて合格し、向こうへ。父親の仕事の関係で小学校時代3年間アメリカに住んでいたので、馴染みもあったんですね。で、1年間プレイして現役を引退。そのままスポーツビジネスの勉強をしようと思っていたところ、たまたまヨハン・クライフ(元オランダ代表)がスペインのバルセロナで大学(ヨハン・クライフ国際大学)を立ち上げたことを知ったんです。そこですぐに連絡を取ってバルセロナへ行き、スポーツマーケティングなんかを3年ほど学びました。学んだ中で一番大切なのは「負け方が大事」ということ。お客さんが見て面白いか面白くないかが、プロとしての視点です。いくら強いチームでも全部は勝てないから、負けるにしろゲームが面白ければ次も見に来ようとチケットを買ってもらえる。同じことを、ドイツのサッカーチームの経営者にも言われました。
日本には、セレッソ大阪の強化部長として戻ってきました。そこから湘南ベルマーレへ移り、チームを再建したりJ1昇格を果たしたりして、社長も務めさせていただきました。

SELF TURNポイント③/(株)ドーム安田秀一氏との再会が疑問の答えをくれた

湘南ベルマーレの社長時代、アンダーアーマーの販売総代理店(株)ドームの安田秀一氏と再会しました。安田氏は法政大学のアメリカンフットボール部出身で、学生時代に面識があったんです。「スポーツを通して社会を豊かにしたい」「スポーツを産業化したい」という話を聞き、すごく新鮮な気持ちになりました。なんかモヤモヤしたものが溶けていく感じで。彼らと何かをうまくやったら、イノベーションが起きるかも、とも思いました。当時、湘南に新しいスタジアムを造ってビジネスをやりたいという野望も持っていたんです。市民クラブであることから株主が多く、私自身うまく話をすることができませんでした。
それからも安田氏とは定期的に会っていたんですが、「東日本大震災の復興支援をしたくていわき市にアンダーアーマーの物流センターを建てた」と連絡がありました。雇用創出も含めた永続的な支援をするためとのことです。350人の従業員がいて、9割がいわき市民です。安田氏は、土地が余っているからここにサッカーチームをつくったらどうだろうという話になり、見に行ったんです。Jリーグはスポーツでの地方創生を理念に掲げているが、実際にできているんだろうか。ここで面白いものができたら地方はどうなっていくのかなと、俄然興味が湧いてきました。いわき市は35万人の人口を抱えていて、ここで熱狂的なサポーターが生まれれば元気になる。自分が抱えていた思いも実現するかもしれないと、いわきFCへ来ることを決めたんです。

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野望は、365日稼働するスタジアムづくり

安田氏とは最初にファシリティ、つまり活動拠点の大切さを話しました。活動拠点を作りしっかりとチームを作り上げ、チームを鍛え上げる。アカデミーの子どもたちも素晴らしいグランドでトレーニングができ、しっかりと人材育成ができる環境整備を第一に考えました。スポーツの産業化を考えれば、おカネを生む施設が必要です。今まで日本のスポーツ業界にはあまりない、家賃を取って回していくビジネスを行うため、手始めに「いわきFCパーク」をつくりました。近い将来のスタジアムづくりへの第一歩です。飲食店やスポーツアパレル、ジムや英会話教室などが入居していて、平日でもたくさん人が訪れています。

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スポーツを通じて地域のブランド価値を上げていくには、ファシリティ・スタジアム建設がマストだと考えています。365日フル稼働するスタジアムが我々の野望です。それによって地方が活性化するし、雇用も生まれます。出ていった人も戻ってくるでしょう。
この間、いわき市や商工会議所、経済界や各種スポーツ団体による「共同宣言」を発表しました。将来のまちづくりに向けて連携を進めていくというものです。スタジアムについても、その中で話していくことになると思います。

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「スポーツでいわきを東北一に」のビジョンは揺るぎなく(後編)へ続きます。

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株式会社いわきスポーツクラブ 代表取締役 兼 総監督

大倉 智さん

1969年神奈川県生まれ。1992年早稲田大学卒業後、日立製作所入社。社員選手から柏レイソルのプロ選手に転向。1996年ジュビロ磐田へ移籍。1998年に米国ジャクソンビル・サイクロンズへ移籍後現役引退。2000年よりヨハン・クライフ国際大学(バルセロナ)にてスポーツマーケティングを学ぶ。2004年から湘南ベルマーレ強化部長に就任しJ1昇格。2015年に湘南ベルマーレ代表取締役社長に就任。2016年よりいわきスポーツクラブ代表取締役。

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