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教育の「魅力化」が地方存続のカギ/水谷智之
一般社団法人地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事 水谷智之氏
月刊事業構想 編集部
2018/09/11 (火) - 08:00

リクルートキャリア社長を経て島根県に移住し、公教育の魅力化に取り組む水谷智之氏。人材・教育のプロは地方再生のカギは「WILLを持つ人材」と指摘する。

海士町はなぜ再生したのか

2017年に設立された地域・教育魅力化プラットフォームは、島根県をフィールドに、県教育委員会と連携しながら公教育の魅力化に挑戦している 一般財団法人だ。地域社会に開かれたプロジェクト学習(PBL)プログラムの開発・展開や、地方留学・教育移住による新たな人の流れの創出などに取り組んでいる。

「少子化が進めば、地域の高校が次々になくなっていく。高校が廃校すれば、子育て世帯の多くは域外に移住します。つまり高校の存続は地域の存続とニアリーイコールなのです」と、代表理事 の水谷智之氏は指摘する。

水谷氏は新卒でリクルートに入社し、リクナビ統括編集長などの要職を務めたのち、2012年からリクルートキャリアの初代社長に就任。50歳を過ぎ、長く関心を持っていた地域や公教育の分野に挑戦するため、島根県に移住したという。

水谷氏が教育改革のモデル地域と位置づけるのが、島根県海士町だ。隠岐諸島の海士町は人口約2,300人のうち約350人がIターンで、地方創生の先進地として知られるが、ほんの10数年前までは財政破綻寸前の過疎自治体だった。

その状況下で山内道雄町長が推進したのが、教育改革を起点とした地域活性化である。廃校寸前だった島前高校の「魅力化プロジェクト」を立ち上げ、島を教材にした地域学・夢探究などの PBLプログラムや島留学制度の創設などを実施。今では学生の半数を都会や海外からの留学生が占めるようになり、子どもの域外流出が止まり、若い家族のUIターンで人口の社会増も実現した。海士町の挑戦する姿勢に魅力を感じ、移住起業家も増える一方だ。

「私は海士町の魅力化プロデューサーも務めていますが、海士町の考え方を日本中に広げ実践することが、地域・ 教育魅力化プラットフォームの役割だと考えています」と水谷氏は語る。

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地域で「WILL」を育む

人材・教育の現場に長く携わってきた水谷氏は、不確実性の高まる社会を切り拓く人間には、2つの力が大切だと指摘する。

ひとつは、自分で意志を育み、自分 のエンジンを稼働させる力「WILL」。 これは主体性や当事者意識とも言い換えられるだろう。もうひとつは、正解や勝算が見えなくてもまずやってみるという「踏み出す力」である。「これらはチェンジメーカーの必須要件であり、地域の未来をつくる意志ある若者の要件です」

「WILL」を育むには、強烈な原体験と小さな興味に対するアクションの積み重ねが必要だという。それを育む最適なフィールドは、都会ではなく地域である。

「PBLを地域の大人たちが協力して実施することで、子どもたちは社会の手触りを実感できます。そして、本気の大人に出会えば、子どもたちは必ず成長します。『あんな大人になりたい』 『まちづくりに関わりたい』という気持ちが高校時代に芽生えれば、海士町のように、子どもたちが地域に帰ってくる可能性は極めて高くなります」

地域は教育から再生し、日本は地域から再生する――。地域・教育魅力化 プラットフォームと水谷氏のチャレンジに大きな期待が集まっている。

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