【地方都市の魅力】三重県四日市市 子育て・教育に安心できる東海エリアをリードする産業都市
亀和田 俊明
2021/06/14 (月) - 18:00

5月末に発表された東京都の5月1日時点での人口は1396万3056人と2ヵ月連続で増加しました。進学や就職などが影響して地方からの転入者が転出者を上回る転入超過でしたが、前年同月比でみると3万9917人減、と4ヵ月連続の減少となり、コロナ禍で東京から転出する人の動きは続いているといえます。昨年4月から政令指定都市や中核都市について「移住と暮らし」という視点からさまざまな都市の魅力と実態をお伝えしてきていますが、今回は三重県「四日市市」です。地方都市への移住を考える上で参考にしていただければと思います。

「共働き子育てしやすい街ランキング2020」で中部地区1位

現在、四日市市ではリニア中央新幹線開業に向け、近鉄四日市駅周辺の整備事業が進められていますが、「近鉄四日市駅周辺等整備事業」の一環としてバスやタクシーなどの乗降場を集約したバスターミナルの整備「バスタプロジェクト」の事業化が決まっており、中部地区では初めてのことになります。同事業では交通機能の強化を図るとともに、にぎわい創出や回遊性の向上、中央通りを活用した空間の魅力向上も目指しているといいます。

さて、四日市市を抱える三重県は、ふるさと回帰支援センターの「移住希望地域ランキング」で2015年に20位にランクしたこともあります。四日市市は、森記念財団都市戦略研究所が経済規模や文化度などを都市力として109都市を対象にした「日本の都市特性評価2020」によれば、経済ビジネス分野で13位と高評価で、交通アクセス分野は44位でした。なお、日経 DUAL「共働き子育てしやすい街ランキング 2020」では、施設と補助などが評価され中部地区1位。

『日本書紀』に「美し国」と記載されるほど豊かな風土が誇りの三重県ですが、四日市市は県北部に位置する中心都市で、東部は伊勢湾を望むほか、多くの河川に恵まれ、西部は鈴鹿山系に面しています。人口は津市を上回る同県最大の約31万人で、便利で暮らしやすい都市機能が充実しているのが特徴。近年は“工場夜景”の聖地としても知られ、美しい鑑賞スポットも点在。地場産業も製造業を中心に多く、ものづくり都市としても知られています。

四日市市の夏は日照時間も長くて蒸し暑く、冬は冷え込む上に「鈴鹿おろし」を呼ばれる北西の季節風が平野部を吹きわたり伊勢湾に抜けていきますが、晴れた日が多い地域で、年間を通じて湿度が高めです。年間の日照時間の合計値は1960.4時間と日照量も多く、年間の降雨量は1724.4mmと平均的で、温和な気候です。1981年から2010年までの平均気温は下表のように14.8度で、2020年は16.0度と上がっています。

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鉄道と道路のネットワークが充実しているほか、四日市港や中部国際空港など海空へのアクセスの良さなど優れた立地インフラが産業基盤や都市の発展を支えています。中部国際空港へはバスで約1時間40分程度の距離です。今後、東京と大阪間を最短67分で結ぶリニア新幹線が東京と名古屋間、名古屋と大阪間の段階的な開通を控えていますし、高速道路網の集中的な整備などが期待されています。

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JR関西本線や近鉄名古屋線、伊勢鉄道が南北の広域的な移動を支え、内陸部には近鉄湯の山線、三岐鉄道三岐線、四日市あすなろう鉄道内部線・八王子線が伸びていますので、名古屋・京都・大阪方面へのアクセスも良好で、他県への移動はスムーズです。近鉄四日市駅を起点にバス網が広がっているほか、生活バスよっかいち、公共交通機関が利用しにくい地域で、四日市市は山城富洲原線・神前高角線・磯津高花平線の3路線で自主運行をしています。

四日市駅の1日平均の乗車人員の推移

ビジョンは「ゼロからイチを生み出すちから イチから未来を四日市」

2021年3月に国土交通省から発表された三重県の公示地価は、住宅地で前年より1.1%、商業地でも1.2%、いずれも29年連続の下落でした。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響で回復傾向が停止したとみられています。四日市市は横ばいとなったのは16地点でしたが、住宅地で0.4%、商業地で0.5%、といずれも下落しました。好調でした四日市駅周辺の店舗や近隣マンションへの投資機運も低下したようです。

2021年の公示地価の変動率

四日市市の事業所数は約1万3千、従業員数は約16万人で、いずれも三重県でトップ、事業所数では東海圏で9位、従業員数で8位。2015年の国勢調査によれば、全就業者数の内訳では、第一次産業が1.4%、第二次産業が35.1%。第三次産業が63.4%でしたが、他地域と比べ第二次産業の割合が高くなっているのが特徴。従業員数では、「製造業」が最も多く、「卸売業・小売業」、「医療・福祉」、「建設業」の順で、有数の産業都市であることが分かります。

四日市市の事業所数・従業員数

四日市市はコロナ禍にあっても、「総合計画」(2020~2029年度)に掲げる将来都市像の実現に向けて、推進計画事業のスケジュール等を必要に応じて見直しながら着実な進捗を図るとしています。令和3年度予算においては、重点的に取り組むべき事業を下表のように「子育て・教育」「文化・スポーツ・観光」「産業・港湾」「交通・にぎわい」「環境・景観」「防災・消防」「生活・居住」「健康・福祉・医療」の8分野に整理し予算計上されています。

令和3年度の主な事業

また、同市が将来を見据え2020年に策定した総合的・計画的なまちづくりの指針となる「四日市市総合計画(2020年度~2029年度)では、まちづくりの最上位理念として、「ゼロからイチを生み出すちから イチから未来を 四日市」を掲げ、下図の四つの将来都市像「子育て・教育安心都市」「産業・交流拠点都市」「環境・防災先進都市」「健康・生活充実都市」の実現に向け、市民・事業者とともに「オール四日市」でまちづくりを推進するとしています。

【四つの将来都市像】
四つの将来都市像

(出典:四日市市)

生活環境に恵まれ「子育て支援の充実」も市民に高評価

四日市市の社会動態をみると、下表のように2015年以降は転入超過の社会増で、2020年の転入超過数も776人に増えています。三重県では2015年に東京・有楽町に「ええとこやんか三重 移住相談センター」を開設し、県内の各市町と連携して移住の促進に取り組んでいますが、2020年度の同県への移住者数は前年度比34%増の514人となり、5年連続で前年を上回っています。なお、関東圏からは108人、東海圏からは137人、関西圏からは211人でした。

四日市市の転入者数・転出者数・転入超過数の推移

三重暮らしを始めるに当たっての移住相談は、就職相談アドバイザーも常駐している東京・有楽町の移住相談センターのほか、名古屋や大阪に移住相談デスクが設置されています。三重県移住・交流ポータルサイト「ええとこやんか三重」では、「住む」「働く」「医療・子育て」などカテゴリー毎の応援制度をはじめ、県内に住む先輩移住者のインタビューや体験ツアー、イベントなどの情報がまとめられています。

なお、東京23区の在住者や東京圏在住の23区への通勤者で三重県に移住し、マッチングサイトを通じて県内の企業に就業した人を対象に移住支援金(単身で60万円、二人以上の世帯で100万円)が支給されます。同県内においても移住先の市町で支給要件が異なりますので、四日市市での移住支援金の希望者は、観光交流課で相談を受け付けています。なお、ウェブ上で空き家に関する情報を提供する「空き家バンク」や移住者の住み替えに対する支援制度もあります。

妊娠から出産、乳幼児から青少年まで途切れのない施策を図るために四日市市では「こども未来部」を設置していますが、2019年度に9年ぶりに達成した保育園の年度当初の待機児童数はゼロを継続しています。また、中学までを対象に医療費を助成しているほか、保健師や助産師などが妊娠中から産後まで継続した支援を行っていく「産前・産後サポート」をはじめ、子育て支援アプリ「よっかいち!アプリDe子育て よかプリコ」も配信中。

四日市市「待機児童数の推移」

四日市市では、働く女性、働きたい女性のための相談窓口「働くウーマンナビ」を開設しています。キャリア形成や働く上でのさまざまな悩みについてキャリアコンサルタントが個別相談に応じていますが、2021年度からはオンラインでの面談も開始しています。さらに、ハロワーク四日市にある「マザーズコーナー」ではキッズコーナーも設けられており、子育て中の女性の仕事探しを支援しています。

四日市市内の生活情報

三重県では、電話による救急医療機関についての問い合わせは、「三重県救急医療情報センター」でオペレーターが24時間対応により診療可能な医療機関を紹介しているほか、「医療ネットみえ」で、「お医者さん・歯医者さんネット」や「救急医療情報ネット」という2種類のサービスを提供。救命救急センターは、三重県の基幹災害拠点病院でもある三重県立総合医療センターと市立四日市病院にあります。

臨海部に石油化学コンビナート、内陸部には世界最先端の半導体メモリー工場など多様な産業の集積により日本有数の産業都市として発展してきた四日市市は、今後、東海地域で存在感を放ち、リードする中核都市となるために、子どもと家族を社会で支える「子育てするなら四日市+」、都市の機能と魅力を高め、活力あふれる都市を創る取組「リージョン・コアYOKKAICHI」、健康で豊かに暮らせる社会を築く取組「幸せわくわく!四日市生活」といった3つの重点的横断戦略プランによる相乗的な効果の創出が期待されています。

前述のように「子育てをするなら四日市」を標榜していますが、さまざまな子育て政策に取り組むなか、今年度は市政アンケートで「子育て支援の充実」の項目が前年の12位から5位に大幅に上昇するなど、市民からも高い評価を得ていますし、「共働き子育てしやすい街ランキング2020」でも中部地区1位にランクインしているほど、移住者ターゲットである子育て世代にとって暮らしやすい四日市市は、地方都市への移住を考える上で有力な候補地の一つといえるのではないでしょうか。

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