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地域での成功事例。リーダーではなくチームに注目せよ
木下 斉
2018/11/30 (金) - 08:00

地域での成功事例なるものが注目をされると、すぐにそのリーダーに注目が集まる。これは昔から変わりません。その時代時代に注目される地域活性化事例があり、そのリーダーは時代の寵児として注目を集めます。そして多くの地域の人たちは、「うちのまちには、ああいう素晴らしいリーダーがいないからね・・・」と語り、出来ない理由にしてしまうこともあります。

しかし、この考え方は地域での事業立ち上げにおいて大いなる間違いをしています。どんな地域での取り組みも、ただ1人だけで立ち上げ、回している人はいないからです。リーダーの背後にいるチームにまで目が届いていないからこそ、本質を見誤っているのです。

地域での事業は目立つ仕事だけではない。

成果を出すプロジェクトは、必ずリーダーの周囲には現場を日々回すスタッフがいて、さらにプロジェクトを推進する上で必要な知見と経験を持ったパートナーが存在しています。

事例を参考にする上で人口規模などの外部環境要因を気にする人はいますが、そもそも内部要因であるチーム構成を気にする人はかなり少ないです。どういう人達がチームを組んで、プロジェクトを立ち上げ、回してきたのか。同じ地域の一つに見えるプロジェクトでも、細かな事業によってチームが違っていることもあります。

構想力がありカリスマ性があるリーダーがいたとしても、日々の地味な事務作業やクレーム対応が得意とは限りません。はたまた、地元で何代にも渡り商売をしてきて信用を擁する人がいても、実際の事業を金融機関などと交渉する上で必要な計画書などを細かく組み立てるのが得意とは限りません。つまりは目立つ役割と、地味な役割はあるわけですが、これらが組み合わさるからこそプロジェクトは動き、成果を生み出すことが可能になります。

地域での事業は一人では無理であり、特に表から見えやすい役回りの人だけでも成り立たないのです。この多角的な見え方ができれば、必ずしも自分がリーダーにはなれないとしても、チームの中で果たせる役割があることが見えてくるはずです。目立つリーダーが万能に見えるのは、ある意味では幻想です。隣の芝生は青く見える現象であって、実際にはその人は自分でやっているのではなく、適切なリスクを負いながら、できないことはチームで解決していっているのです。

全員合意は必要ない。

一方で、チーム戦だというと全員野球といったように、地域の様々な方の合意形成をするという極端な方向を思考する人が出てきます。しかし、これはまた間違いです。一人で地域のプロジェクトはできませんが、かといってみんなで取り組めばできるか、といえば、それもまた難しいです。というのは、役割、責任をもったチームであればよいのですが、役割も責任も不明確な「みんな」という群集では、すべての人が好き勝手に発言をするだけで、プロジェクトは動かなくなるか、単なる折衷案となってつまらなくなり、地域活性化の事業としての成果を上げることがほとんどありません。

何より最初から絶対的な正解などは存在しない世界です。だから最初に何か一つの答えに地域全体が合意するということ自体が幻想で、それぞれ少人数のチームが挑戦していった結果、成果をあげて残ったものが実は正解だったという話でしかないのです。

だから全員合意よりは、むしろ10、20というチームがそれぞれその地域で思い思いに挑戦しているという地域が中長期的には成果をあげていく可能性が高まっていきます。単一計画の大きな商業施設よりも、分散した専門店が群れている路地裏などのほうが成功する店が誕生しやすいといったことも複数の挑戦の集積効果と言えます。

リーダー依存でも、全員合意でもない、3-5人のチームを作れ。

地域で何かを始める時に、単に他の地域のリーダーのカリスマ性に酔いしれるのでも、地域全員のワークショップとかに逃げ込むのでも意味はありません。自分たちの地域で、他の地域で成果をあげている事例でも、リーダーのまわりにいるメンバーに注目をすべきです。自分はそのようなチームでどういう役割を果たすことができるか、ということを考えるのが、大切だったりします。それは別に派手な話でもなんでもなく、凡庸なるものであったとしても重要なことがたくさんあるわけです。

文章を書いたり、写真をとることが得意であれば、毎日ウェブを更新し、写真付きで地元の情報を発信することかもしれません。有料マーケットを開催する時に実際の区割りを決めて、出店者に位置を確認しながら当日の搬出搬入をすることかもしれません。イラストが描けるから、案内を文章ではなくイラストでわかりやすくすることかもしれません。もともと宿泊施設で働いていたならば、ゲストハウスの運営などができるかもしれません。交渉ごとが得意であれば、取引交渉ができるかもしれません。デザインが得意であれば、デザインで貢献ができるかもしれません。それぞれの人生で積み重ねてきた時間の中で、できることが必ずあるはずです。そのような自分にできる役割を意識した3人〜5人の小さなチームを作り、事業に挑戦することが第一歩です。そしてその時に、互いに出せる範囲でいいから資金を出し合い、事業を立ち上げていくことが不可欠です。

そのような小さなチームが成長し、互いの役割と時流が合わさり成果を上げていくと、その中で目立つのはリーダー。そして、そのリーダーが何から何までやっていたかのように外からは見られるようになっていくのです。そして、そのチームも常に時代によって変化をしていかなければ、ある時には成果をあげられていたものの、いつからかは成果が出せなくなっていくこともあります。一つのチーム、一つの事業には寿命があり、常に浮き沈みを繰り返しています。だからこそ、複数のプロジェクトを動かす様々なチームが生まれていく地域が強いのです。

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