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「記念日」の有効活用による地域の活性化とは/地域活性機構 リレーコラム
亀和田 俊明
2019/03/15 (金) - 08:00

商品やサービスをPRするために社名や商品名など独自の記念日を設ける企業が増えていますが、最近では地方の特産品など観光資源を宣伝するためのツールとして地元ゆかりの記念日を制定する地域も徐々に増えてきています。毎年、約200前後の「記念日」が新たに登録されていますが、今回はこの「記念日」の現状から今後の地域活性化について考えてみたいと思います。

企業や商品、地域の魅力を内外に発信できる「記念日」

このコラムが掲載される3月15日は、「靴の記念日」で、翌16日は、「財務の日」といわれるように日本では法律で定められている「国民の祝日」以外にも企業や自治体、団体、個人などによって制定されたさまざまな記念日が存在しています。そのような記念日の登録制度を実施し、PRや普及をサポートするのが日本記念日協会です。2010年ごろから急増し、現在、登録されている記念日は、1,970件を数えるといいます。

■一般社団法人日本記念日協会
記念日への関心と理解を高めることを目的に、記念日情報の収集、研究、PR活動を行うために1991年4月1日に「日本記念日協会」を正式に発足。記念日情報の総合窓口として各種メディアに情報を提供するとともに、記念日の認定・登録、市場調査、コンサルティングを実施しています。
http://www.kinenbi.gr.jp/

同協会の加瀬清志代表によれば、ここ数年は毎年新たに約200件の記念日が登録されているといいいますが、申請者から申請があると審査会での「政治的、宗教的、反社会的でないこと」などの基準や名称、日付、由来、目的、活動内容の審査を経て記念日として登録され、同協会のホームページやカレンダーに掲載されたり、メディアへの情報提供も行われます。その際には登録料が1件につき10万円(4月からは15万円)必要になります。

同協会の記念日は、約8割が企業によるもので、主に企業の宣伝活動の一環として登録されてきた歴史があります。45件の記念日の登録がある11月11日ですが、1999年に登録された江崎グリコの「ポッキー&プリッツの日」は、その形が並ぶ数字の1と重なることや毎年話題となるキャンペーンを行うなど11月になると売り上げが伸びるといわれているほどで、記念日による費用対効果は大きいといえるでしょう。

また、記念日文化研究所の実態調査(2015年実施)で何らかの記念日を制定している都道府県は27府県(約57%)、中でも「都民の日」「県民の日」など地域住民の日を冠した記念日が12都県で制定されていたことが分かりました。それは、廃藩置県により現在の県域や県名などが確定した日に由来するものが多いといいます。自治体の記念日制定は、地域に愛着と誇りを持たせ、郷土愛を醸成するきっかけとなり、地域の魅力の発信にもつながります。

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(資料:日本記念日協会資料を基に筆者作成)

活発化する市町村レベルでの「記念日」によるPR・振興

そうした記念日は、下表のように北は北海度から南は鹿児島県まで、さまざまな地域の市町村レベルでも制定されています。地域住民に昔から愛され、食されてきたソウルフードのPRや振興も含めて制定されることが多いようです。さらに、自然や名所など歴史的な意味合いを持つ観光資源的なものも多いほか、最近では「まちづくり」的なカテゴリーに属するものも現れ始めています。

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(資料:日本記念日協会資料を基に筆者作成)

さらに、同協会では、記念日文化の向上を目的に、歴史的、産業的、文化的などにおいて、記念日のシンボルとなる場所(発祥の地・由緒、縁のある地など)、記念日を活用して地域振興を図る地域などのなかで、特にふさわしいと認められる場所・地域を「記念日の聖地」として選定していますが、2013年9月4日に第1号として岡山県倉敷市が選ばれ、写真のように『記念日の聖地』第1号認定記念式典も催されています。

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「記念日の聖地」認定記念式典※右は伊東香織 倉敷市長(写真提供:日本記念日協会)

選定理由としては、商工団体、大学。行政、マスコミ関係者などが連携し、「記念日を過ごすまち倉敷」推進協議会を設立し、倉敷地域の魅力的な資源や素材を地元業者の商品やサービスと結びつけ、記念日にふさわしい「体験観光プラン」の開発を進めてきた実績があったことなどから選ばれました。背景には実際に年間を通じて多くの人がさまざまな大切な「記念日」を倉敷で過ごしている実情があります。

倉敷市では、「記念日を過ごすまち倉敷」というウェブサイトが開設され、「食べる」、「泊まる」、「創る」など全てを体験できる記念日プランが提供されているほか、倉敷観光案内所をはじめとして市内各所でパンフレットが配布されており、県外や外国人も訪れるようになったといいます。現在も日本記念日協会には全国各地から「記念日の聖地」についての問い合わせがあるといいます。

地域資源の活用・発信・認知度向上に効果的な「記念日」

同協会に登録されている記念日の約3割は、「食べ物」に関わる日というほど、自治体や商工・観光団体、地域住民にとって重要な資源、コンテンツであるほか、大切にしたい産物でもあり、地域グルメや地域食材を冠した記念日は、以下の表のようにどの地域でも多く制定されています。記念日にちなんだイベント開催、商品開発、キャンペーン展開などによる話題喚起で観光誘客にもつながっている例が多くあるようです。

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(資料:日本記念日協会資料を基に筆者作成)

最近では、記念日にSNSなどで写真により発信することで盛り上がるといいます。記念日が制定されていることで、“ハレの日”がより際立ち、認知度アップにつなげたいと捉える団体などにとっては、格好のツールとなり得るのでしょう。何よりメディアを活用したり、印刷物を作成したりするより安価に情報を拡散でき、発信効果が高いのも登録者にとっては魅力になっていると思われます。

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(資料:日本記念日協会資料を基に筆者作成)

加瀬代表は、「日本人は記念日が好き」と述べていますが、もちろん制定するだけでは効果は限られ、一過性に終わらず、いかに継続し、育てていくか、地域に浸透させていくかが問われます。実際に、登録されている記念日も年間15~20件は活動実態がないことから削除されてしまうといいます。記念日が増えていくなかで埋没しないためにも基本的な活動とともに、制定日や名称、由来などにも一工夫が必要とされているのかもしれません。

持続可能なまちづくりを考える場合、そこに住む人々が地域に誇りを感じるとともに、地域ならではの魅力を発信しているかが重要なポイントですが、自らが地域の魅力に気づいていない、あるいは気づいていてもうまく活用できていない地域が非常に多くあります。これからは、自治体や商工・観光団体などばかりでなく、まちづくり団体や地域住民が地域資源を活用、発信していく際に、記念日の活用というテーマも期待されています。

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