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FILE.04/自動車ビジネスの大転換期に向け企業の組織化から持続的成長へ
信州100年企業創出プログラム事務局(信州大学 学術研究・産学官連携推進機構)
2019/05/08 (水) - 08:00

国立大学法人信州大学など4法人によるコンソーシアムは、中小企業庁のモデル事業として、長野県の次代を担う「100年企業」創出を目指す新しい地域活性事業「信州100年企業創出プログラム」を2018年6月から実施した。
コンソーシアムには信州大学のほか、政府系人材サービス会社の株式会社日本人材機構、地域活性学会における成果の社会還元を担う一般社団法人Lamphi(ランフィ)、信州地区を代表するシンクタンクである特定非営利法人SCOPが名を連ねる。
首都圏などで高度な専門性を持って活躍している人材を、信州大学の「リサーチ・フェロー(客員研究員)」として受入れ、受入企業の課題解決と持続的成長のシナリオ作成に挑戦する本プロジェクト。
今回、この取り組みに参画した企業6社およびリサーチ・フェロー6名に、約半年間に渡る研究・実践活動の成果について伺った。

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受入企業

株式会社ロイヤルオートサービス
代表取締役社長 中田 忠章さん

家業経営から企業経営へ
2代目社長が取り組む組織づくり

当社は自動車の販売と車検整備を柱に、レンタカー事業や自動車保険なども展開しています。県内では中古車の販売台数や車検の生産台数がトップクラス。特に軽自動車の未使用車の格安販売に特化しています。前身はガソリンスタンドで、 1987年に「ロイヤルオートサービス」として創業しました。私は幼少期から跡を継ぐように言われて育ち、紆余曲折ありましたが、約 6 年間の都市銀行での勤務を経て、2001年に当社に入社しました。その時に、当社は銀行という大企業に比べて組織としてのルールがなく、就業規則があれど社員の誰も知らないという状況であることに気づいたのです。当時は社員が50名ほどになっていましたが、社長の父は組織を見きれなくなっていました。私は何とかしようと入社2年目に県内中古車販売業として初のISO9001認証を取得。その際、品質管理責任も務めて組織づくりも同時に進め、社外に対して2代目が後継として戻ってきたことを浸透させました。そして2013年に社長に就任。現在は家業経営から企業経営へと移行している段階で、今はまさにその通過点です。

先が見えない自動車業界の不安
経歴もアイデアもマッチしたリサーチ・フェロー

そうしたなかで自動車業界の将来を考えた時に、見えない部分が多く、私が考えるさまざまな新規事業も正しいのかわからず、また、それを紙に落とし込んで目に見える形にも残せていませんでした。そんな折に会長である父がロータリークラブの関係者を通して今回のプログラムを知り、紹介されたのが佐田さんです。今まで会ったことがないようなコンサルタントで、「社内の多様な人材でチームを組めれば、押しつけではなく自分たちで作った経営計画ができる」という提案は私には考えつかないアイデアでしたし、自動車会社のコンサルタントを長年務めていた経歴も当社に非常に合っていると感じたことから、採用をお願いしました。

会社の将来を担う核となる“人財”を集め週一の研究会から方向性を考える

採用後、佐田さんから依頼があったのが「会社の未来を考えていく人材として、各事業の責任者と核となる人材を招集してください」ということ。現在は集めた6人のスタッフで週一回研究会を開き、佐田さんのもと勉強をしながら、シナリオ・プランニング手法で楽観的シナリオと悲観的シナリオというシナリオを一緒に作っています。佐田さんのプロジェクトは非常に勉強になるうえに笑いを交えて話を進めてくれるので、全く飽きることがありません。今は各自がこの時間を楽しむために参加しています。また、佐田さんはほかのコンサルタントのように課題解決のソリューションをすぐ教えてくれるのではなく、考え方やデータベースの調べ方など我々が今まで知らなかったことを教えてくれるので新鮮ですし、おかげで社員たちが会社の課題を“自分ごと”として捉えてくれ、とても喜ばしく思っています。実は私は、スタッフがここまで当社のことを考えてくれるとは思っていませんでした。この数カ月で勉強を重ねてスタッフに文章を書く力がついたのも佐田さんの開発によるものですし、スタッフに頼もしさを感じています。

シナリオ作りから経営計画を策定
将来的にもリサーチ・フェローとのつながりを

今は現実的なシナリオができたので、それに対しアイデアを出したり、私が新規事業として考えている新車ディーラーの買収や、月々低額の支払いで車のリースを提供する低所得者向けの事業も含め、ビジネスとして成り立つものを見定めている段階です。また、今回のプログラムとは別で、今期に入ってから私より年下の役員から店長まで中堅幹部の経営者感覚を2年間で育もうと取り組んでいるのですが、佐田さんによって中堅幹部のさらに中枢の6 名が集まり、自発的に取り組む姿勢ができていることは大きな後押しになっています。私が気づかないような新規事業も考えており、これから中期経営計画を作っていく段階に向け、良いものができるという手応えを感じています。最終的にこの経営計画は組織と人の計画まで落とし込んだかなり具体的なものを作る予定です。それを踏まえて4 月以降は実行フェーズに入っていきますが、佐田さんにはプログラム終了後もさまざまなアドバイスをお願いしたいと今は考えています。


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リサーチ・フェロー(客員研究員)

佐田 啓二さん

外資系大手企業にて人事・人材開発・企画部門でマネージャーを担当。その後、独立し、大手企業および官公庁等の戦略経営教育や経営コンサルに29年間従事。企業の持続的成長を叶える「未来認識によるビジネスチャンス発見の研究」をベースに独自の経営コンサルを展開。なかでもドイツの大手自動車メーカーの正規ディーラーの経営品質コンサルを8年間担当。この間、大学・大学院MBA教育を兼務し、戦略経営教育並びに理論研究も行う。2010年には財団を共同創設。同財団総合研究所社会的共通資本ソリューションセンター長に就任。

長野県という拠点と社会貢献性に興味
大学がコアのユニークなプログラム

外資系大手企業にて人事・人材開発・企画部門でマネージャーに従事し、その後、経営コンサルタントとして独立。大手企業や官公庁等の経営コンサルに29 年間従事しました。また、大学教員も兼務し、戦略経営教育や理論研究も実施。企業の持続的成長を叶える「未来認識によるビジネスチャンス発見の研究」をベースに、独自の経営コンサルも展開してきました。そのなかで最も長かったのが、ドイツ某大手自動車メーカーのグローバル戦略日本法人担当です。国内正規ディーラーを対象とした戦略経営のイノベーションに取り組むプロジェクトを8 年間ほど任されました。
今回のプログラムを知ったのは、日本人材機構からの一斉メールです。まず長野県という場所に興味をもちました。実は以前から軽井沢に住んで新幹線通勤をする生活に憧れていて、別荘を購入したもののなかなか思うようにはいかなかったことから、今回、長野に活動基盤をおくのは面白いと感じました。また、社会貢献事業にも取り組もうと9 年ほど前に財団法人を設立し、同財団総合研究所社会的共通資本ソリューションセンター長としてさまざまな社会事業に取り組んでいました。今回のプログラムは社会貢献にも関係しましたし、さらに私は大学の教員も16年ほど務めていたので、大学がコアになっている点もユニークだと感じ応募しました。応募直後に、トントン拍子でマッチングが進んだ印象です。

家族経営の課題に対し、経営情報の可視化と情報の共有化をミッションに

ロイヤルオートサービスは家族経営で成長してき ましたが、現 2 代目社長は都市銀行で大企業の組 織経営を学び、実家との経営の違いを実感されて いました。初代は強権的なリーダーシップを発揮し て会社の土台を構築されました。2 代目社長は社長不在でも組織が機動するような企業経営を形にしたいと考えていたので す。そのためには何が必要かと相談を受け、まず考えたのが情報の共有化です。どうしても家族経営は阿吽の呼吸で、経営計画も親子の頭の中でわかっている状態でしたが、組織的な機動力を発揮するためには経営情報を周囲に明示し共有することが必要です。 そこで考えたのが、経営情報の可視化です。可視化をしたら互いに情報共有が図れ、次へのアクションを起こせます。今回は、半年間のプログラムで基本的な 下地である経営情報の「可視化」と「共有化」を私のミッションとしました。

3つのステージとプロジェクトチームのシナリオ作成から中期経営計画を策定

ミッションの達成にあたり、社長の人選によるプロジェクトチームを作り、3つのステージを設けて毎週午後からの開催で議論をしながら作業を進めています。チームには経営、営業、人事、教育の各部門からエキスパートを集め、女性と取締役も一人ずついます。
ステージ1は「シナリオ・プランニング手法」を使って未来を可視化し、未来の構造的変化からビジネスチャンスを発見するというアプローチで、11月からの 3カ月間取り組んできました。ここでは5~10年ほど先の未来を洞察し、自社における自動車ビジネスの変化や長野県内・松本市内の環境変化を考察。ほかの洞察情報なども踏まえながら議論し、それをシナリオA・Bとして可視化しました。そして、この未来の構造的変化から自社のビジネスチャンスの発見に取り組みました。すでにいくつかのチャンスが発見されており、実現可能性があるか、儲かるか、自社にマッチングしているか等を吟味しています。今後は、ひとつのシナリオから1~2のチャンスを絞り込みます。
ステージ2としては、ステージ1で発見したビジネスチャンスを中期経営計画にどう落とし込むかを議論します。また、社長の頭の中にある戦略構想をヒアリングし、中期経営計画に落とし込み、可視化する作業に取り組みます。ここで、戦略とアクションプランの青写真を整理しようと考えています。
最終ステージ3が4月になります。ここでは1カ月かけて実行し、今後の実践的進め方を検討していきます。
今回、私はコンサルではなく一緒に協力するチームの一員というスタンスで参画しています。私の信条は「ビジネスを、楽しく面白いアートとして理解すると同時に、アカデミックな科学として学びつつ、実務に即した形で取り組むこと」。そうしたなかでメンバーが「面白い、楽しい」と言ってくれていることから、参加メンバーの変化を実感しているところです。

企業の支援と大学の研究を継続し地域企業の成長モデルを全国に展開

4月以降も必要とされれば中期経営計画を実現するための支援を継続したいと考えています。また、当プログラムでは論文執筆と研究発表・審査を経て信州大学の客員教員に就任し、本プログラムの後輩を支援するチャンスも準備されています。企業の継続的支援をしつつ、地域企業の100年成長モデルを実現するため、日本全国に水平展開できたら楽しいと考えています。


[ 従業員の方から ]

総務人事部 財務担当 プロジェクトリーダー 芳川 諒太さん
佐田さんは知識や経験が豊富でいろいろ話をしてくださり、話も止まらないので毎回刺激を受けています。特に私は財務職に就いて1年目なので、多くの知識や柔軟な発想を得られていますし、プロジェクトに沿った話以外もしていただくので、みんな新鮮に感じているのではないでしょうか。会社にいると自分たちのことしかわからないなかで、住む場所も経歴も異なる佐田さんの話は興味深く、また真面目な顔で面白い冗談も言うので笑いが絶えません。加えて、日々の仕事のなかではなかなか企業が将来的に存続していくための話し合いができませんが、今回のプログラムを通じて未来を見据えながら働けるのは非常に役立っています。


[ 受入企業 紹介 ]

業種/小売業・商社(自動車・輸送機器)
株式会社ロイヤルオートサービス(松本市)

1987年設立。長野県下で中古・新車自動車販売・整備・車検事業と、レンタカー事業や自動車保険等も展開。中古車販売台数や車検生産台数トップクラスを誇る。特に軽自動車の未使用車の格安販売に特化。県外や海外への新市場開拓戦略もめざしている。


リサーチ・フェローのミッション

社員が会社の戦略や方向性を理解・納得し、主体的に考え・行動するための、会社の事業構想(戦略や方向性)の可視化、経営情報の共有化、コミュニケーションの活性化

現状分析

「社長の頭の中にある事業構想・計画を可視化させ、情報の非対称性を改善して情報共有化のベースを作り出すことがテーマです。」(佐田さん)
社長は家業的経営の限界を認識し、持続的成長に向けた課題として「企業の組織化」を考えています。それは、社員の意識改革も意味します。社員が会社の戦略や方向性を理解し、主体的に考え行動するためには、会社の事業構想を可視化して経営情報を共有化し、コミュニケーションを活性化する必要があります。現時点では社長の頭の中にしか中期経営計画に関する情報がありません。そのため、中核となる社員でプロジェクトチームを作り「、シナリオ・プランニング手法」で可視化した「複数の未来シナリオ」をベースに中期経営計画書(可視化)の策定をめざします。


近い将来の未来ビジョン

・新モビリティービジネスの脅威と商機を踏まえ、100年企業をめざした事業構想(中期経営計画)の策定
・事業計画などの可視化から経営方針や事業実施の意図に対する社内の共通認識を向上
・自社の持続的成長に向けた社員の意識改革、企業の組織化
・社員を巻き込み、成長にもつながるLiving Company 体制の構築

未来シナリオ

自動車ビジネスは、今後「パワートレーンの多様化」「車の知能化・IoT 化」「シェアリングサービス」などの台頭により大きな転換期を迎えます。それを踏まえ、社内の将来を担う人材を集めてプロジェクトチームを結成。未来から振り返って現状を考える「シナリオ・プランニング手法」で未来にある自社のビジネスチャンスを可視化しました。そして、5 ~10 年後のカーライフビジネスを考える作業工程でメンバーの情報共有を図りながら、シナリオA「ブルースカイ・モビリティーシナリオ」、シナリオB「グレースカイ・モビリティーシナリオ」の 2 つのシナリオを3カ月かけて作成。未来の構造的変化(顧客、顧客ニーズ、市場、競争相手、技術)から自社のビジネスチャンスとリスクを発見しました。今後は、社長が考える戦略経営の可視化と、発見したチャンスを手に入れる戦略を含む中期経営計画書を策定。さらに策定した戦略を起動(浸透)させる新しい組織体制を構築していく予定です。

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