家族で島根に移住してみえてきた「本当に必要なもの」とは
浅賀 桃子
2018/10/10 (水) - 12:00

大阪の大学を卒業後、上京。約8年間東京で暮らすも、グループ会社の島根県への拠点開設を機に転籍。2017年9月に家族で島根にIターン移住した株式会社パソナテック 島根Lab長の田窪大樹氏に、Iターンに至るまでのお話と実際に移住して感じていることを伺いました。

Iターンに至るまで

──大阪ご出身で、8年間東京で働かれていたわけですが、Iターンを決めるまでのいきさつを伺えますか

私の妻が鳥取の大山出身でして。私自身はもともと田舎暮らしに憧れ、農業をやりたいな、などと漠然と思っていました。しかし、逆に都会に憧れて出てきていた妻からは「農業をやりたいなんて、そんな甘いものじゃないわよ」と諭されまして…。

妻と結婚して5年くらいして子どもが出来ました。帰省する際、小さな子どもを連れて大阪にも鳥取にも…というのはお金もかかりますし、肉体的にも精神的にもきついなと思うようになりました。また、共働きで、何かあったときにお互いの両親に頼れないというのもあります。「何か東京にいる意味あるのだろうか」と違和感を覚え始めました。

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そこで、大阪でも鳥取でもいいので、とにかく「(日本の)西に帰ろう」と思い、転職サイトに登録しました。希望勤務地を大阪、鳥取などとして探し出したのです。 ただ、これといったところがないと感じていました。転職する、会社を変わるということはそれなりにリスクもありますし。

すると2017年の春、パソナのグループ会社で島根Lab立ち上げの話がもち上がったのです。グループ会社ですので会社自体は変わることにはなりますが、同じグループということで(転職の)リスクは低いなと思いました。

また、仕事面でもチャンスだと感じました。それまで約8年間東京でマーケティングの仕事、主に集客マーケティングをしていたのですが、もう少し幅広く仕事をしたいなという気持ちがありましたので、島根Labでの仕事は私の思いにぴったりはまったのです。6月くらいから選考があり、9月から家族で島根に移住することになりました。

島根Labは今、私と2人のエンジニアの3名体制です(2017年12月現在)。1名は現地で採用、1人はインターンで、島根と縁もゆかりもない人です。2018年2月にまたUターン採用で1人入社予定です。

取り組みとしては、島根県発祥のプログラミング言語「Ruby」の普及、IT’エンジニアの育成や交流会、それから地方創生といったところでは自治体、大学や民間企業等と連携したセミナーなどをやっています。先日も島根県主催のイベント「先輩エンジニアから学ぶUIターン 島根“ITエンジニア”移住Night!」(2017年12月13日実施)をパソナテックにて運営し、私もファシリテーターとして登壇いたしました。

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移住してみて

──実際に島根に移住して、率直な思いをお聞かせください

正直、ネガティブな気持ちはないです。もう一生住みたい、早く家を建てたいと思うくらいです(笑)。
特に大きいなと思うのが通勤の面ですね。東京でも島根でも変わらず月曜から金曜まで働いているわけですが、木曜・金曜の疲れ方が変わるなと実感しています。なぜだろうと改めて振り返ったときに「これは通勤の違いだ」と気づいた感じです。東京に居たころは当たり前だと思っていたので特に気にしたことはなかったのですが。

──地方に移住すると、都心とは情報量が違うという声も聞かれますが、そのあたりはいかがでしょうか

正直、どういう情報が欲しいかによって違うのかなと思いますね。たとえば買物についていうと、店舗に行って情報を得たいということなら、物理的に無理です。IT系の勉強会が少ないのも確かにありますので、その点は諦めるしかないですね。
ただ、今はインターネットもテレビもあるわけです。リアル店舗や勉強会がないなら、インターネットで探して取りにいけばいいと思います。

逆に皆さんにお聞きします。
「都会ならではのもので、なくなって困るものがありますか?」

考えてみてください。意外にないのではないでしょうか。このごはん屋さんがないと困るとか、人によってはそういうこともあるかもしれませんけれど。現に、都会に憧れて出てきていた妻は、欲しいものがリアル店舗で手に入らないときはインターネットで買っていて、それで満足しています。

移住に踏み出せない人へ

──読者の皆さんのなかには、いずれは地方に移住してみたいと考えながらもなかなか踏み出せないという方も少なくありません

私自身の感想でいえば「実際行ってみたら、案外大丈夫だな」というところですね。 ひと昔前は情報がだいぶ遮断されている感じがあったと思いますが、今はそうでもありません。取ろうと思えば情報は取れます。
どうしてもつながっていたい友達がいて「常に会っていたい」ということでもなければ問題はないのでは、と思います。ある程度の年齢になって、たまに会えればいいのであれば、普段地方に住んでいてもいいわけですしね。

今都市部に住んでいる方は、買物や友達との飲み会など「地方に行ったら難しそうだな、都会でしかできないのではないか」と思うことを列挙してみるとよいと思います。それがなくなっても平気かどうかを冷静になって考えてみるのです。意外に地方に行っても実現できることはありますし、なくなってもどうにかなることも少なくないものです。それと合わせて、地方に行って得られることも出してみるといいと思います。

──地方移住の際、仕事がどうなるのか気にされる方も少なくありません

確かに、移住にあたっての一番の問題は仕事だと思います。私自身も転職を考えていたころに、大阪や鳥取などで探していたという話をしましたが、ピンとこなかったのは給与の面ではなく、主に仕事の内容の問題だったと思います。これまでと同じWebマーケティングだけの求人募集ばかりだったりしましたので。

私は、実際今の会社(パソナテック)に転籍することになり給与水準は下がりましたが、別にそこまで(給与に対し)こだわりはなくて。それよりも重視したかったのは、子育ての環境でした。

とはいえ、給与が下がることに対し不安に感じる人もいるかもしれません。今の(都市部での)環境と比べて何かしら水準が下がるのではないかと思うのでしょう。しかし、水準が下がったことで得られないものが、本当に自分自身にとって必要なのかと考えると少し勇気が出てくるのではないかと思います。

──田窪さんの生活はどのように変わったと思いますか

生活は相当シンプルになりましたね。私は島根に移住してから、モノを買わなくなりました。実際のお店がないので、お店に寄ってつい買ってしまうということもないですし。おいしいご飯を週に何回も外で食べる必要があるか、と考えると、その必要はないな、など。

先ほどの仕事と給与の話とも関連してご紹介したいデータがあります。
「地方に行って給与水準が下がるといわれるけれど、支出も下がるので60歳時点の貯蓄額は同じ」
自治体が地方への移住促進のためによく出しているものなのですが、まさに私自身がこれを実感している感じですね。

移住を少しでも考えている人へのメッセージ

──最後に、移住を考えている人へのメッセージをお願いします

地方にいきたいとちょっとでも思っている人にとって、地方で得られることの大きさは魅力になるのではないかと思います。だからこそ移住を考えている人は、常に関連情報に対するアンテナを張っておくことが大切ですね。

私の知り合いの方も、移住する2~3年前から情報収集して、いろんなイベントにも顔を出していました。少しでも考えているなら、とにかく動いて情報の感度を高めることが大切です。そして、自分にとって「本当に必要なもの」が何かについて考えていくことが第一歩になるのではないでしょうか。

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田窪大樹さん

1986年生まれ。大阪府大阪市出身。大阪大学法学部卒業後東京へ移り、株式会社パソナ パソナキャリアカンパニーに入社。約8年、主にマーケティング業務を担当。2017年9月、グループ会社、株式会社パソナテックのニアショア開発拠点「島根Lab」の立ち上げに伴い家族全員で島根へ移住。現在はパソナテック島根Lab長として、自治体の地方創生関連事業企画運営、島根県内のエンジニアコミュニティづくり等に従事。

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