東京のITメガベンチャーから、ものづくりのまち 新潟・燕三条のアウトドアメーカーへ。 地元の経済圏を活発化することを目指して
株式会社スノーピーク 皆川 暁洋さん
BizReach Regional
2017/04/27 (木) - 13:00

大学時代から東京での就職へ
大学時代からレールに乗らない主義。卒業後はITベンチャーへ

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もともと実家は三条市にあり、高校まで新潟で過ごしました。北海道の大学に進学し、在学当時から学生主体のNPO活動に参加したり、国会議員の選挙事務所で手伝いをしたり、企業経営者のもとで丁稚奉公をしたりしていました。考えてみれば、当時から決まったレールに乗っていくタイプでなかったんでしょうね。結局8年北海道にいて卒業後の2003年、当時ITベンチャーとして脚光を集め始めていた楽天株式会社に入社しました。
とくにITに詳しかったわけではなかったのですが、経営者・三木谷氏のバイタリティがすごかったので、楽天なら確実に成長できると思い入社を決めました。大手企業だと年齢ではじかれるだろうし、それよりもこれから躍進する企業に入ったほうが、自分の成長のために学びが多いと考えたからです。

入社後の配属先は、当時買収したばかりの子会社でした。ここで約1年半の間、企業文化の違いから生まれる利害関係を調整するスキルなど、いろんなことを学びました。その後は、不良債権の回収を含めた買収事業の運営にも携わり、買収元との交渉や、債券の知識もないので経理の人にサポートしてもらいながら契約書の交わし方など、経験を積んできました。

異動も多い楽天での9年間でしたが、最終的にはグループ横断型のマーケティング系の部署に所属しました。いわゆる宣伝部みたいなところにいて、スポーツ大会などのイベント開催時には、楽天側の窓口としての立場でした。最後の役職は、宣伝部グループのグループマネージャー。といっても専属の部下は1名のみで、自分でけっこう動いていましたね。人がやったことがないことを一から立ち上げたりもして、面白かった。あの手この手で予算をもらいながらCMなども手掛けました。

Uターンのきっかけ
3.11がきっかけに。「いつどうなるか分からない」なら、
好きなことを

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転職すると決めたきっかけは、2011年3月に起きた東日本大震災でした。北海道出身の妻と、いつかはもっと住みやすい地方へいきたいと話をしていたのですが、具体的な活動につながっていませんでした。子供もすでに3人いましたし、妻もフルタイムで正社員として働いていたので、「教育や世帯年収はどうなるのだろうか、、、」という問題もありましたね。
でも震災後、「人間いつどうなるかわからない。何かあれば、自分の生活がいきなり壊れるかもしれない」と思ったとき、やりたいことがあれば躊躇する理由はないと夫婦で話し合って、その年の秋くらいから新潟への移住を決意し、転職活動を始めました。

移住を考えていた理由は二つありました。一つは、家族みんなで一緒に過ごす時間をもっと持ちたいということ。当時横浜に住んでいたのですが、親族は近くに誰もいなくて、子供3人を育てながらの共働きはすごく忙しかったんです。とにかく妻が大変で、「親戚とか親がいる環境で生活したいよね」と話していました。時間的なすれ違いも多かったですね。

もう一つの側面は、もちろん私自身の仕事のことです。自分の地元の新潟に近い所で働いて、いつか地元に貢献したいという想いがありました。私が帰っただけで経済成長率が上がるなんてことはないでしょうけれど、「地元の活性化に何かしら役に立ちたい」という思いは強かったですね。

地元経済との結び付きが非常に強い
「スノーピーク」に転職先を絞って

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違う環境に飛び込むには、自分にとって思い入れがあるところがいいと思い、実際にユーザーだったアウトドアメーカー「スノーピーク」1本に絞って転職活動を始めました。
テントを購入しユーザーになったきっかけは、アウトドア好きの友人に「スノーピーク製品を買っていれば高いけど問題ないよ」と言われたことから。そこから調べてみると、自然指向のライフスタイルを提案し実現する企業精神や経営者の想いの強さ、地元密着という姿勢が見えてきて。「新潟へ行くのなら、スノーピークに行かないでどこへ行く!?」という思いがありましたね。

学生時代に北海道拓殖銀行の破綻を目の当たりにしたことから、経済活動がいかに重要かを理解し、地方を活性化するためには第一に「お金を稼がなきゃいけない」という考え方をするようになりました。これから稼ぐ可能性のある企業にジョインして、その会社の成長を加速させることにまずは貢献したいと思いました。
スノーピークは製品を自分たちで企画し、燕三条地域の小さな町工場さんと一緒に作っているものも多くあります。スノーピークが儲けるほど、地場の町工場がうるおう。そういう循環がおきているのが素晴らしいと思いました。

楽天の三木谷さんは日本にこだわっていました。世界へ視野は向けているけど、あくまで日本発。スノーピークの場合は、燕三条というより小さい単位で、規模感こそ違いますが、「楽天が日本を」、「スノーピークは燕三条を」元気にしていくという意識でしょうか。成長を目指しているという意味では、似たようなものを感じましたね。

新潟へのUターン後、家も建て、家族みんなで過ごす時間も増え、人生がより豊かに

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現実に移住が決まったとき、浮上したのは住宅の問題でした。横浜で住んでいたマンションを1カ月ほどで売却し新潟へ来たのですが、賃貸ではなかなか広い物件がなく、最初は手狭でしたね。そこで転職して3カ月目、まだ試用期間中に土地を買って家を建て始めました。「クビになったらその時に考えよう」と思いつつ家を建て始め、転職して1年経つ前に完成。冬場は雪かきも非常に大変なのですが、近所の人との良いコミュニケーションが生まれたりもします。これも雪国に住む、自然の味わいの一つかなと思っています。

こちらで4人目の子供ができたこともあって、妻はしばらく働いていませんが、ちゃんと生活はできていますし、お金の件はどうにかなるのかなというのが実感です。最近になって妻もパートを始めたのですが、学歴やキャリアなどオーバースペックで働き先がなかなかないのが実情。子育て中の女性が能力を発揮する場所を見つけるのは大変かもしれませんね。

前と違って、夜8時・9時には帰宅できるようになったので、家族で過ごす時間は増えましたね。子供たちとも顔を合わせて、週末も一緒にいることで、人生がとても豊かになったように感じています。

執行役員として、会社全体のシステム業務改革に携わる日々

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スノーピークは、社長自らオーナーシップを取って、バリバリ牽引していく会社です。楽天時代の雰囲気をもう一回味わいたい、超忙しいなかで感じる充実感を味わいたいとも思っていたのですが、まさに期待どおりでした。私個人の業務として、地場の工場の方との直接的なやりとりはないのですが、地域経済に貢献している実感も生まれています。

入社当初はEコマースを担当し、その後半年で国内営業本部長になって、2年半ほど経ちます。今年から執行役員・ビジネスプロセスイノベーション本部長になると同時に、会社全体の業務機関システムを刷新し、パワーアップを図るミッションを課せられています。

大幅なシステムの入れ替えと同時に、創業以来50年もの間に積み重なってきた懸案の改革も進行するので各部門との調整もなかなか骨が折れますね。3名のシステム系スタッフと、Eコマース、物流も含め3つの大きなシステムの一斉稼働を目指しているのでとにかく大変。今年になってまた帰宅時間が遅くなり、想定以上に忙しい日々を過ごしています。

地方へ人材を呼び込むために、
活発に流動させるためにできることは何か

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地方がもっと良くなればいいと思って、実際にビジネスを伸ばしたいと考えたとき、いつも人が足りないなと実感します。なかなか地方だと人材を獲得できないんです。
私の個人的な目標は、会社の利益をもっと上げて、地元に還元すること。エリア全体の給与水準を上げ、よりよい人材を呼び込むことです。仕事内容だけでなく金銭的にも魅力的な職場を増やしたいですね。

また、自分の経験からも、移住後に他のステップへ行く選択肢がもっとあるといいなと思います。地方に行く場合、“骨をうずめる覚悟”が必要な感覚がありますが、全国あちこちに気軽に行けるようになればいいですよね。キャリアが断たれるという恐れもなく、人材がもっとスムーズに流動できる環境整備やネットワークの構築なんかが必要だと思うし、いずれその方面に貢献できたらと考えています。
また、スノーピークからもいろんな人材が独立して、どんどん金を稼げる種になって、ちらばれるといいですね。新潟という地方で核になる企業として、もっと力を貸せるような立場になっていきたい。それが実現できたとき、「新潟に来て本当に良かったな」と心から実感できるのではないかと思っています。

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株式会社 スノーピーク 執行役員
ビジネスプロセスイノベーション本部長

皆川 暁洋さん

新潟県出身。北海道・札幌での大学時代からNPOをはじめ様々な社会経験を積む。卒業後、楽天株式会社に入社。急成長を遂げる創成期特有の熱気のなか、マーケティング部門でCM製作などに携わった後、新潟へUターン。三条市のアウトドアメーカー「スノーピーク」に2012年入社。入社後4年の現在、執行役員となり会社全体のシステム業務改革に邁進中。家族は、妻と子ども4人。

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